モテ男の北原くんは、報われない恋をしている
 仕事を理由に誘うスマートさ。さすがすぎる。

 北原の言葉を聞いた吉野先輩は「なるほど」とうなずいた。

「一瞬、口説かれてるのかと思っちゃった」

 冗談っぽく言った吉野先輩に、北原は表情を変えずにさらりと言う。

「そう思ってくれても構いませんけど?」

 思わせぶりな言葉で相手を振り回す悪い男、きた――っ!

 あくまで冗談に冗談で返すような、軽い口調。だけど顔のいい男のそのセリフは、攻撃力が高すぎる。
 並みの女性なら、この時点でノックアウト間違いなしだ。

 けれど吉野先輩は、そんな言葉を苦笑いで受け流す。

「北原くんはすぐそういう冗談を言う」

 吉野先輩はまったく本気にしていない表情だった。
 そのやりとりを見て、私の鼓動は激しく高鳴る。

 あぁ、いい。実にいい。百戦錬磨のモテ男が、まったく相手にされてない。

 なぜなら吉野先輩には、海外赴任中の素敵な恋人がいるから。

「お店は気になるけど、今日彼が帰国する予定なんだよね」

 吉野先輩がうれしそうに言う。
 その言葉に、北原が一瞬だけ黙り込んだ。

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