モテ男の北原くんは、報われない恋をしている
「電話?」
そう問われ、「あ、うん」とうなずきながら画面を見る。
「吉野先輩からだ」
「吉野先輩?」
その名前が出た途端、北原の表情が変わった。
「仕事のことかもだから、出るね」
そう断って、スマホを耳に当てる。聞こえてきたのは、吉野先輩の綺麗な声。
『もしもし、今井さん? こんな時間にごめんね。午後に送ってもらった資料の件で、確認したいことがあって』
質問に答えた後、疑問に思い「吉野先輩、まだ会社にいるんですか?」とたずねる。
「たしか、アメリカから彼氏さんが帰ってくるって……」
うれしそうな表情を思い出しながらそう言うと、吉野先輩が電話の向こうで小さく笑った。
『あー、それ延期になっちゃったの。仕事の都合って言ってるけど……、どうなんだろうね』
声だけでも、無理しているのが伝わってくる。
吉野先輩の恋人が、赴任先の女性スタッフと親しくしているという話は、社内で密かな噂になっていた。日本に戻ってこないかという打診を断ったという話も。
『ひとりで家にいても暇だし、たまってる仕事片付けちゃおうと思って』
そう問われ、「あ、うん」とうなずきながら画面を見る。
「吉野先輩からだ」
「吉野先輩?」
その名前が出た途端、北原の表情が変わった。
「仕事のことかもだから、出るね」
そう断って、スマホを耳に当てる。聞こえてきたのは、吉野先輩の綺麗な声。
『もしもし、今井さん? こんな時間にごめんね。午後に送ってもらった資料の件で、確認したいことがあって』
質問に答えた後、疑問に思い「吉野先輩、まだ会社にいるんですか?」とたずねる。
「たしか、アメリカから彼氏さんが帰ってくるって……」
うれしそうな表情を思い出しながらそう言うと、吉野先輩が電話の向こうで小さく笑った。
『あー、それ延期になっちゃったの。仕事の都合って言ってるけど……、どうなんだろうね』
声だけでも、無理しているのが伝わってくる。
吉野先輩の恋人が、赴任先の女性スタッフと親しくしているという話は、社内で密かな噂になっていた。日本に戻ってこないかという打診を断ったという話も。
『ひとりで家にいても暇だし、たまってる仕事片付けちゃおうと思って』