君の余命に僕の初恋を捧ぐ

あとがき

本作を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。作者の紫陽花です。
この『明日を生きる少女と、昨日を生きる少年』という物語は、私の中にずっとあった「永遠の愛とは何か」という問いに対する、一つの答えとして紡いだ作品です。
執筆を終えた今、私自身も日和や康太と一緒に長い旅をしてきたような、心地よい切なさと充足感に包まれています。
今回は作者目線ということで、私がこの物語を書くにあたって張り巡らせた「裏側の仕掛け」や、キャラクターたちに込めた想いを、いつも通り語らせてください!

★「明日」と「昨日」の残酷なすれ違い
私が本作で最もこだわったのは、「明日を生きる少女 小林日和 × 昨日を生きる少年 斎藤康太」という二人の対比です。
作中で康太が患った脳の病気は、「大切な記憶から順番に消えていく」という設定にしました。これは私なりの残酷な演出です。普通、人は「明日」という未来に向かって思い出を積み重ねて生きていきます。日和にとっての恋は、これから育んでいく未来の象徴でした。しかし、康太にとっては違います。時間を進める(明日を迎える)ことは、日和との大切な思い出を失っていく恐怖、すなわち「過去(昨日)の崩壊」を意味していたのです。

康太が自ら命を絶つという選択をしたとき、単なる絶望による悲劇にはしたくない、と私は強く思っていました。彼は生きることを諦めたのではなく、むしろ「小林日和を愛している自分(昨日)」を永遠に固定するために、命を懸けて時間を止めたのです。
一方で、遺された日和は、彼の死という強烈な「過去」を背負いながらも、彼の遺した愛をエネルギーにして「明日」へ歩き出さなければならない。この二人の時間の流れの非対称性こそが、本作の心臓部です。

★3歳の約束と、フルネームに込めた「光」の対比
もう一つ、私がプロットの鍵としたのが「3歳の頃の初恋」という事実です。
読者の方には、中学生の二人のささやかな恋物語として読み進めてもらい、終盤の日記で一気に「実は康太の人生のすべてが日和だった」という衝撃を味わってほしかった。

康太にとって、3歳の時に公園で泣いていた自分を救ってくれた日和は、人生で最初の「光」でした。
だからこそ、彼らのフルネームには明確な光のニュアンスを込めました。「小林日和」はその名の通り、彼を全肯定して照らすあたたかな太陽です。そして「斎藤康太」の「康」は健康を願う親の愛ですが、彼はその願いとは裏腹に、窓際で夕暮れの光を浴びながら静かに消えていく刹那の少年として描きました。

日和にとっては「数ヶ月の恋」だったものが、康太にとっては「14年の生涯のすべてを懸けた恋」だった。
この熱量のギャップが日記を開いた瞬間に溢れ出す構成は、書いていて私自身も胸が締め付けられるものがありました。


物語のラスト、日和の元に差し込む木漏れ日は、康太からの「僕の代わりに明日を生きて」というメッセージです。
一見、死別というバッドエンドに見えるかもしれませんが、私としてはこれは「二人の純愛が、誰にも邪魔されない形で永遠になったハッピーエンド」のつもりで書きました。

世界の誰よりも短い14年。
だけど、彼らが遺した愛は、間違いなく世界の誰よりも永遠です。
私の紡いだ文字が、ほんの少しでも皆様の心に「消えない記憶」として残ってくれたなら、作者としてこれ以上の幸せはありません。

改めて、彼らの物語を見届けてくださり、本当にありがとうございました。
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