メイドインダーク(マフィア令嬢と少年メイドのインモラル逃亡潜伏)
第二話「妄想と家族ごっこと壊れた少年」(後)
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あの日、ケネディの両親を拳銃で撃ち殺した後、家の火災報知器を壊してから灯油を撒いて火をつけた。そして騎虎の勢のマリア(当時十七歳)は、自分が破壊し尽くしいた丸子家の家庭から十一歳の幼馴染を連れ出し、最小限の身支度をして新幹線に飛び乗った(既に日本を出るための準備は一週間も前から進めていたので)。
今は本名同然になった「ケネディ」という仮の名前をつけて、昔に着ていた自分の少女服を着せて変装させて(白人ハーフで「混血のロシア人」扱いだったマリアと一緒にいても違和感が一層薄くなるように……「ケネディ」は苗字だったけれども、そんな細かいことまで周囲のすれ違う日本人は深く考えなかっただろう)。上手い具合にウィッグ(付け毛)をつけてベレー帽を被らせると女の子にしか見えず、そういう扱いは今現在も続いている。
もっとも当初は犯行(突発的な放火殺人!)と事態の発覚を遅らせるためと、日本を脱出するまでの一種の人質みたいな意図が強かったのだが、そんな目論みは大きく狂ってしまい、後々までの「伴侶」になることなど、どうしてあの時点でマリアに予想できただろうか? 半ば誘拐・拉致するみたいに連れ出したにせよ、最初は適当なところで侘びと別れを告げて解放するつもりだったのだ。
もちろん、執着して引っ張り廻してしまったのは、幼いとはいえ数少ない心を許せるような「愛情の対象」だったことも大きな理由になっていただろう。だから合理的な動機以上に、せめて未来永劫に別れる前に自分の身に起きた話をちゃんと聞いてもらって、ちゃんと「ごめんなさい」とだけでも伝えておきたかったという、かなり感傷的な願望や欲求も多分に含まれていた。幼馴染の少年の身の上にまで悲劇と不遇をもたらしてしまったことでも、少なからず責任感や義務感を抱いていたのだから。……そんな心境が一種の愛情と紡ぎ合わされたロープのように縺れ合わさって列なり、終わりのない無限ループのように現在まで続いていて、今ではすっかり奇妙で歪な「特別の絆」のようになっている。
不思議なことにあのときの「ケネディ」は何ら反抗するでもなく、全く素直に言いなりになっていた。後に知った話によれば、実は誘拐される経験が「二度目」だったのだそうで、まだ前回の見知らぬ女に比べればマリアの方が安心で抵抗もなかったらしい。
あるいは初恋相手にも等しい、大好きな「マリアお姉ちゃん」が両親を殺したという事実を、容易には理解して受け入れることが出来ないのかもしれなかった。
だから逃走中のホテル(姉妹という建前で宿泊したのだが)で最初の晩に肉体関係を持ったことも、異常な境遇で欲情が抑えられず(マリアは直前の短期間に度重なる性虐待や暴行を受けていただけに「愛情のあるセックス」への欲求を押さえかねたから)、さらには不安を鎮めたかったこと、せいぜい愛情を込めたお別れと謝罪くらいの意味しかないはずだったのに……。
明け方にホテルの部屋にかかってきた謎の電話が、さながら追い討ちするかのような、暗黒の深淵を垣間見させたのだった。
『全部見ていたぞ。とんでもない女子高生だな。……わかっていて連れ出したのか? 仕舞いにその子は、君を殺すかもしれないぞ。生まれつき遺伝子が呪われているんだよ。だから、そこいらで「繁殖」しないように去勢でもしとかなきゃ、安心できないってことだ』
そしてマリアがケネディの「特殊な事情」を知ってしまったことが、その後の二人の運命を意想外の展開へと導くことになったのだ。
これこそ狂った神様の悪戯だとしか思えないのだ。
あの日、ケネディの両親を拳銃で撃ち殺した後、家の火災報知器を壊してから灯油を撒いて火をつけた。そして騎虎の勢のマリア(当時十七歳)は、自分が破壊し尽くしいた丸子家の家庭から十一歳の幼馴染を連れ出し、最小限の身支度をして新幹線に飛び乗った(既に日本を出るための準備は一週間も前から進めていたので)。
今は本名同然になった「ケネディ」という仮の名前をつけて、昔に着ていた自分の少女服を着せて変装させて(白人ハーフで「混血のロシア人」扱いだったマリアと一緒にいても違和感が一層薄くなるように……「ケネディ」は苗字だったけれども、そんな細かいことまで周囲のすれ違う日本人は深く考えなかっただろう)。上手い具合にウィッグ(付け毛)をつけてベレー帽を被らせると女の子にしか見えず、そういう扱いは今現在も続いている。
もっとも当初は犯行(突発的な放火殺人!)と事態の発覚を遅らせるためと、日本を脱出するまでの一種の人質みたいな意図が強かったのだが、そんな目論みは大きく狂ってしまい、後々までの「伴侶」になることなど、どうしてあの時点でマリアに予想できただろうか? 半ば誘拐・拉致するみたいに連れ出したにせよ、最初は適当なところで侘びと別れを告げて解放するつもりだったのだ。
もちろん、執着して引っ張り廻してしまったのは、幼いとはいえ数少ない心を許せるような「愛情の対象」だったことも大きな理由になっていただろう。だから合理的な動機以上に、せめて未来永劫に別れる前に自分の身に起きた話をちゃんと聞いてもらって、ちゃんと「ごめんなさい」とだけでも伝えておきたかったという、かなり感傷的な願望や欲求も多分に含まれていた。幼馴染の少年の身の上にまで悲劇と不遇をもたらしてしまったことでも、少なからず責任感や義務感を抱いていたのだから。……そんな心境が一種の愛情と紡ぎ合わされたロープのように縺れ合わさって列なり、終わりのない無限ループのように現在まで続いていて、今ではすっかり奇妙で歪な「特別の絆」のようになっている。
不思議なことにあのときの「ケネディ」は何ら反抗するでもなく、全く素直に言いなりになっていた。後に知った話によれば、実は誘拐される経験が「二度目」だったのだそうで、まだ前回の見知らぬ女に比べればマリアの方が安心で抵抗もなかったらしい。
あるいは初恋相手にも等しい、大好きな「マリアお姉ちゃん」が両親を殺したという事実を、容易には理解して受け入れることが出来ないのかもしれなかった。
だから逃走中のホテル(姉妹という建前で宿泊したのだが)で最初の晩に肉体関係を持ったことも、異常な境遇で欲情が抑えられず(マリアは直前の短期間に度重なる性虐待や暴行を受けていただけに「愛情のあるセックス」への欲求を押さえかねたから)、さらには不安を鎮めたかったこと、せいぜい愛情を込めたお別れと謝罪くらいの意味しかないはずだったのに……。
明け方にホテルの部屋にかかってきた謎の電話が、さながら追い討ちするかのような、暗黒の深淵を垣間見させたのだった。
『全部見ていたぞ。とんでもない女子高生だな。……わかっていて連れ出したのか? 仕舞いにその子は、君を殺すかもしれないぞ。生まれつき遺伝子が呪われているんだよ。だから、そこいらで「繁殖」しないように去勢でもしとかなきゃ、安心できないってことだ』
そしてマリアがケネディの「特殊な事情」を知ってしまったことが、その後の二人の運命を意想外の展開へと導くことになったのだ。
これこそ狂った神様の悪戯だとしか思えないのだ。