メイドインダーク(マフィア令嬢と少年メイドのインモラル逃亡潜伏)

第四話:エピローグ(裏)「ジョニーさんの秘密/人類史への考察」


 或る国の最新鋭の機密ラボ(研究所)。
 金属の床と壁に囲まれたスペースには、幾つものカプセルが並んでいる。そしてその中には目やら心臓やらの「人間の部品」が入っている。驚くべきことに、それらは全て「生きている」ままだった。なぜならば人工の特殊な培養液の中で栄養と酸素を供給し、特殊な研究材料として細胞が生きたままで保管されているのだ(提供者の多くは既に死んでいるのだろうが)。
 部屋の反対側には冷凍庫もあり、そちらには「冷凍もの」が保管されている。
 この研究所の別の場所には、生きたサンプルの子供たちが「特別保護」の建前の下で「飼育」されているスペースもあるのだった。
 その子供たちは普通の人間ではなく、遺伝子の突然変異した「新人類」である。
 つまり、野放しにすれば現生人類の存在を脅かしかねない「ミュータント」なのだ。
 この国際的な秘密機関の研究所は現生人類が地球上で残存するために、自然発生してくる危険な新人類(ミュータント)を適切に管理することが至上目的とされている。


 歴史的に見ても、より狡猾で凶暴性の高いような、新しい(あるいは未知の)タイプの人種グループが、既存の古いタイプの集団を駆逐するというような現象はしばしば起きている。たとえば現生人類の遺伝子を調べると、一部にネアンデルタール人由来のDNAがあるそうだが、これは生存競争で優勢になった現生人類の祖先がネアンデルタール人のグループを吸収合併してしまったことの証拠であると言われている。
 その手の類似の事例は原始時代のみに留まらない。
 北方アジアで誕生した新モンゴロイド(古代の遊牧民の匈奴など)は、それまでアジア地域で繁栄していた旧型のモンゴロイドを混血しつつ駆逐してしまった。中国大陸では頻繁な混血で人種の性格が変容してしまったことが知られている(古代の秦や漢の時代と、中世の唐の時代を比較すれば、文学などでも好みが大きく変化していることが指摘されている)。また、朝鮮半島などは中近世に完全に民族浄化されて古代朝鮮人とは人種が変わっているらしい。さらにはジンギスカンの遺伝子を継承している子孫は現代の世界で大量にいるといわれるが、大征服で有名な彼ら蒙古人もまた新モンゴロイドの一種である。
 旧型タイプの「古モンゴロイド」人種はせいぜい、隔絶した日本列島やチベットで生き延びているだけ。現生の日本人すらも、中国人よりも含有比率こそは低いらしいものの、大陸からの新モンゴロイド(や大陸からの新来、別系統の古モンゴロイドや混血人種)の血統が少なからず混血しているらしい。
 他にもヨーロッパのコロンブスがアメリカ大陸に到達してから、先住民が滅亡して南北アメリカが白人の土地になったのも有名な出来事である。南米などでは「混血」という形で制圧が進められたが、現在の南米人の遺伝子を調べると父方から継承する遺伝子パーツは大部分がスペインなどの白人男性の由来で、先住民の男たちはほとんど子孫を残せずに殺し尽くされ根絶されたのだとわかる。当時の良心的なラス・カサス神父の凄惨な「インディアスの破壊についての簡潔な報告」では、現地のインディオたちが奴隷として湯水の如く殺戮されたことが記述されている。
 これらの新来人種による制圧・征服では、直接的な殺戮だけでなく、「子孫を残させないこと」有効な作戦だ。混血によって相手方の民族集団のアイデンティティを書き換えてしまうことは基本戦術なのである。現地の男性を弾圧して家庭を持たせず、女性を奪って侵略者側の子供を産ませれば、その子は大抵は父方の血統のアイデンティティを強く継承することになる。あるいはより短絡的に暴力でレイプして、無理やりに自分たちの子供を妊娠させるも頻繁に行われるやり方だ。
 生存競争と自然淘汰によるこれまでの人類の進歩の過程、そして来るべき人類の未来のための「継承戦争」。既存の「良心」や古い「公正」の観念から解放されて偽装と欺瞞や上辺の迎合などの狡知にのみ長け、さらにはサイコパス的に利己的で「心の優しさや温かさ」が欠如して攻撃性・凶暴性・嗜虐性を兼ね備えたような、人間の暗黒面が煮詰まったような「鬼畜」人種が最終的に勝利する可能性が高いのかもしれない。
 ……ただし反対に、人類の祖先が、過去の氷河期での絶滅危機を乗り越えられたのは、相互の「優しさ・思いやり」の性格と「連帯・助け合い」の精神によるという正反対のような説もあるので一概には言えない面もあるのだが。
 とにかく、この「国連直属」の秘密研究機関では、その手の「悪の新人類・鬼畜人種の勝利」による人類滅亡危機を回避するためという名目のもと、新しい突然変異遺伝子を持つミュータントを研究・管理している。それで世界各国に支部を持って秘密裏での活動が黙認されているわけだ。もっともらしい「正義の体裁」さえ偽装して繕えば、この世界では実はどんな非道でさえもまかり通ってしまうらしい。
 とにかく、まさに曰く付きで「リアルの都市伝説」なのだった。

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