いじわるな指先に惑わされる恋なんてしたくないです!
首元のボタンの外されたシャツの上から羽織っただけのスーツが、ひゅーっと吹いた風で揺れた。

ずっと下を向いてるフリをして握られた手ばかり見ていた顔を上げると宇佐美さんと目が合った。

「誘ってると思うだろ」

「…っ」

じっと見つめるみたいに、見てくるから。

「そ、そんな顔してません!」

してない、そんな顔…!

誘ってるだなんて、そんなの…っ

ないけど、でも…


綺麗な手だって思ったあの日から離れなくて。


酔った勢いで弾いていたピアノの鍵盤を叩く指先がまるで撫でるようにしなやかで、たまらなく私を刺激したから。


あの手に、触れたら?

触れられたら?



私の体を撫でるみたいにー…



「誘いたい」

「え…?」

そっと私の手の甲にキスをした。
ぶわっと熱が吹き込まれるみたいに体中が熱くなる。


宇佐美さんと目を合わせたまま、何も言えなくて。

「だからそんな顔するなって言ってんだろ」

「…っ!」

私の言葉を待つ間もなく、私の体に触れた。

勢い任せにぐいっと抱き寄せられた体は宇佐美さんの胸の中にすっぽりと収まって、宇佐美さんの体温を感じる。

服の上からすーっと指先でなぞられた。

私の太ももから腰、少しずつ、少しずつ、その指先は上へと向かって。


これがあの手、ずっと見ていたあの手…

白くて細くて長い、ピアノを弾いていた指先の…!


「…んっ」


この季節の薄着では服越しからでもわかる、宇佐美さんの手が。

ちっともゴツゴツなんかしてるように見えないのに、触られて感じる筋肉が伝わってくる。

何度も何度も撫でるから、体全部で宇佐美さんを感じてるみたい。

「蓮見」
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