この時間を忘れる方法があるなら
『悪い‥‥眠ってた』

「いえ‥‥あの‥お口に合うか分かりませんが
どうぞ。」

大きな欠伸を一つした川崎さんがワイシャツのボタンを緩めると、眠そうな足取りでダイニングチェアに座り並べられた料理を見渡した

『この短時間でこれだけ作ったのか?』

「はい‥あ‥いえ‥作り置きしていたものもあるので全部ではないですが、疲れてる時は胃に優しいものの方がいいかと‥」

小ぶりな土鍋の蓋を目の前で開けると、卵粥を器に装い差し出した

他にも浅漬けやお浸しなど数種類とビタミンが取れるフルーツなどもあり、初めて食べてもらうからか味付けは本当に心配だった

『いただきます』

美しい所作で私の料理を口に運ぶと、フッと小さく笑った川崎さんに思わず心臓がハネる

初めて‥笑った‥‥
たったそれだけのことだが、あまり感情を表に出さない彼が初めて見せた柔らかい表情に胸が締め付けられる

『美味しい‥‥君は料理が上手いんだな‥。
一緒に食べよう。』

「‥うん」

パクパクと美味しそうに食べてくれるだけで、自分が何か一つでも役に立てているならと安心したのかもしれない

それに、誰かとこんな風に会話がしたったのかもしれない

それ以上会話はなかったけれど、ここに来て初めて誰かと食べた食事は1人で食べたどんなものより美味しく思えた


『午後から出かけるからそれまで休むよ』

「うん‥分かったよ。ゆっくり休んで気をつけて行って来てね」

『君も一緒に行くんだけど?』

えっ?
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