この時間を忘れる方法があるなら
洗い物をしていた所にシャワーを浴び終えた川崎さんがやって来てそう伝えて来た事に驚き、思わずお皿を落としそうになる

「私も‥ですか?」

『ああ‥そう言ってる。ずっと留守にしてたから外に出掛けよう。いいかい?』

「は‥うん‥大丈夫」

『フッ‥‥言葉はまずまずだな。それじゃまた後で』

仕事モードの時とは違い髪型が下ろされていると、それだけで人格が少し和らいで見えてしまい、不意に見せる知らない表情にいちいち感情が揺さぶられる

部屋に入っていく背中を見つめながらも、盛大にまた溜め息を吐き俯いた

出掛けるって‥何処に行くのだろうか?

相変わらず見窄らしい自分の服装に溜め息を吐きつつも、最低限の準備はしようと薄いお化粧を施し持っている服の中で安いながらも唯一まともなワンピースに着替えた


『乗って』

「えっ?‥川崎さ‥柊さんが運転されるんですか?」

前回のように運転手さんがいると思っていたのに、初めて見るまた高そうな白い高級車の助手席のドアを開けてもらい乗り込むと、運転席に慣れた様子で座った彼に驚いてしまった


『休みの日まで運転手をこき使うなんて君は意外に厳しいんだな』

「いえ‥そういうわけじゃ‥‥」

気まずくて目を逸らして俯くと、不意に自分の頭に触れた何かに顔を上げると、柊さんの大きな掌が私の頭を優しく撫でてから意地悪そうに笑った

恋人のフリなのかもしれないけど‥こういう事を急にされてもどう返していいか分からない‥

余計に気まずくなった私は、自分からは何も話すことはなく、聞かれた事にだけ答えながらも目的地までずっと緊張していた
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