この時間を忘れる方法があるなら
「ッ‥ごめんなさい‥」

腰に添えられた柊さんの腕を振り払うことが出来ずにいると、そっと引き寄せられそのまま柊さんの腕の中に閉じ込められてしまい、首筋に彼の吐息を感じて体がビクっと反応してしまった

何?‥‥何でこんなことをするの?

伝わってしまいそうなほどの心音を何とか落ち着けようとしても、背中に感じる彼の体温とシダーウッドの香りに眩暈がしそうになる

『綺麗だから勿体無いな‥‥』

‥‥えっ?

抱き締める腕の力が少しだけ強まったかと思えばすぐに緩められ首筋に一瞬だけ彼の唇が触れた気がした

『君にはこっちの方が良さそうだ。ゆっくり着替えるといい』

「ええ‥‥そうします」

ゴールドのハンガーラックから彼が手にしたドレスを受け取ると、気まずさから目も合わせずにカーテンを勢いよく閉めた後、そっと触れたであろう首筋に指を這わせる

見た目だけなら莉奈さんに似ているから、きっと柊さんは間違えたのだろう‥‥

家で勉強をしたりレッスンをしている時も、初めて会った時よりも優しい眼差しを時々感じていたから、それは全部私ではなく莉奈さんに向けられたものだと思うようにしていた

任務を忘れてはいけない‥‥私はお金の為とはいえ彼を救わないといけないのだから‥‥

先程のドレスよりも胸元も開かずウエストラインはほっそりとしているものの、そこからふんわりと広がる柔らかいドレスは足首までの丈でかなり気持ちが楽になり、柊さんは満足そうにそれを購入してくれた
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