この時間を忘れる方法があるなら
『莉奈‥』

抱き締められながら何度もそう呼ばれながらも、柊さんが離してくれるまで瞳を閉じてその温もりに包まれていると、あまりの心地良さにそのままその腕の中でウトウトと眠ってしまった

ここで過ごすようになってから眠れていないわけではなかったけど、ずっと緊張して不安だったんだと思う‥‥

だからこそ、緊張の糸がほぐれるようにどんどん意識が奪われてしまい、自分から縋るように身を任せた

『‥‥‥眠ったのか?』

「‥‥ん」

『‥‥‥莉奈?』

「‥‥‥‥‥」

『フッ‥‥‥無防備な人だ‥‥おやすみ‥‥
莉‥‥‥‥‥結愛』

優しく髪を撫でる手が頬に触れ、目を開けないといけないとは思うのに、瞼が重くて開かない私は、唇に触れた熱を最後にそのまま深い眠りについた


『今日の夜は両親が住む家に顔を出してそのまま泊まってくるよ。明日は18時にパーティー会場で会おう。迎えが来るから君はそのまま予約してあるサロンに行ってから来るといい』

練習を兼ねてネクタイをいつものように結ばせて貰い私が広げた背広に柊さんがゆっくりと袖を通してゆく

今日着こなされているダークグレーのスーツもそれに合わせたネイビーのネクタイもとてもよく似合っていてスタイルの良さを一段と引き立てている

「分かりました」

今朝、目が覚めると、温かい温もりに包まれていることに気付き、それが柊さんの腕の中だと分かると戸惑ってしまう私を他所に、何事もなかったかのように朝食を食べ終え今に至る彼に気付かれないようになるべく普通に接した

まさかあのまま朝まで‥しかも柊さんのベッドで眠ってしまうなんて‥‥‥
あまりの気の緩みにそっと抜け出そうと試みたが、すぐに柊さんにバレたのだった
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