ネックとプロポーズ
瑠衣(るい)さん、くすぐったい」



そう言いつつ、和泉くんはじっとしてくれている。



「ねぇ、こっち向いて」
と、和泉くんの声が甘くなった。






梅雨が明けて、夏の始まりを肌で感じる季節がやって来た。

もうすぐ私は三十歳の誕生日を迎える。

すごく憂鬱。

和泉くんは桜の季節に二十八歳になった。



二十代にさようならをすること自体にも抵抗があるのに、私だけ三十代になって、和泉くんとの年齢差がぐんと大きく変わるような気がしてしまう。



和泉くんとは友達を介して知り合ったけれど、あの時私は既に社会人で、和泉くんは学生だった。

当時の私達は「友達の友達」というような関係で、実際私には恋愛感情はなかった。

たったの二歳差だけれど、学生の和泉くんを「まだ子供」としか見られなかったことが関係しているかもしれない。



関係が変わったのは、和泉くんが就職して少し経った頃だった。
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