観覧車が止まった夜、片想いが動き出した
飲み会がお開きになり、店の外に出る。

東雲さんとは何も話せなかったけれど、
それでも、同じ空間にいるだけで十分幸せだった。
普段、食事をとる姿を見たことがなかったから、
彼の新たな一面を見られたことが嬉しい。

にんまりしながら皆の後ろをついて行き、
観覧車の前を通りかかったときに、時任さんが足を止めた。

娘さんに、観覧車からの夜景写真を頼まれたのを思い出したらしい。

けれど、お酒を飲んでいると利用できないと知り、
「東雲くんと撮ってきてくれない?」と私たちにチケット代を押し付けて、
どこか満足そうに二次会へ行ってしまった。

観覧車の前に、二人で取り残される。

「せっかくだから、乗りましょうか」

東雲さんが困ったように笑いながら言う。

「は、は、はい……!」

胸が高鳴るのを感じながら、私は何度もうなずいた。

彼が少し目を細めて笑うと、先に歩き出す。

(どうしよう、緊張するー!)

東雲さんの後を追ってゴンドラに乗り込む。

ドアが閉まり、ゆっくりと地面が遠ざかっていった。
< 4 / 10 >

この作品をシェア

pagetop