【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
福村の声のトーンは、先ほどまでの刺すような冷たさから和らいだものへと変化していた。
麻里肩の力を抜いて、二人の中間位置へと戻る。
「では山崎さん、少し聞き方を変えましょう。二千万という金額が貴方の口座に送られていたことに対して、心当たりはありますか?」
福村の言葉の選択が先ほどよりも格段に柔らかくなり、山崎の動機を紐解こうとするものに修正されている。
麻里は内心驚いた。
(随分と遠回りで抽象的な質問に変えてくれている)
「あの金は……要らないと言ったんだ。私は……家族が無事なら……それだけで、良かった。金のために、ミツルギを裏切れるはずが……ない」
山崎は、福村の問いかけに誘われるように、ぽつぽつと話し始めた。
先程のような混乱はなく、言葉を選ぶように、過去を思い出すように、少しずつ。
「ご家族の安全のためだったと?」
「そうとも……あの時は、そうするしかなかったんだ。そうでなければ、娘も妻も……無事ではなかった」
福村の目が細められた。山崎の発言に違和感を覚えたような、そんな表情だ。
彼は大量の書類の中から一枚抜き取り、それを見ながら何かを思案している。
「脅されていた、ということですか?」
福村が探るように低い声で尋ねると、山崎は目を大きく見開いて黙り込んだ。
山崎の視線が福村と麻里の間を行ったり来たりしている。何かを躊躇しているように見えた。
「山崎さん。福村先生はミツルギ工業の代理で来られていますけど、ミツルギ工業が探しているのは当時の真実。決して偽りの罪を山崎さんに背負わせたりしませんよ。……そうですよね、福村先生?」
麻里の言葉に福村は露骨に顔をしかめた。そしてしばらくの沈黙の後、小さく口を開いた。
「弁護士は真実ではなく、依頼主の利益を守るのが仕事です。ですが……山崎さんが主犯ではないと分かれば、賠償を請求したりはしません。しかるべき相手に請求するでしょう」
苦々しい表情から発せられた言葉に、麻里は内心微笑んだ。
(相変わらずこういうところは正直ですね、福村先輩は)
山崎を誘導するために分かりやすい甘い言葉を言ったりしない。弁護としての信念を曲げず、最大限山崎からの信頼を得るために譲歩した発言だったのだろう。
だが、それでは山崎には伝わらない。
「ほら。福村先生も山崎さんが主犯じゃないかもしれないと考えているんですよ」
麻里が砕いて説明すると、山崎の警戒心が少しだけ緩んだ。
「……おどされて、いたんだ。娘と妻が『どうなるか分からない』と」
麻里肩の力を抜いて、二人の中間位置へと戻る。
「では山崎さん、少し聞き方を変えましょう。二千万という金額が貴方の口座に送られていたことに対して、心当たりはありますか?」
福村の言葉の選択が先ほどよりも格段に柔らかくなり、山崎の動機を紐解こうとするものに修正されている。
麻里は内心驚いた。
(随分と遠回りで抽象的な質問に変えてくれている)
「あの金は……要らないと言ったんだ。私は……家族が無事なら……それだけで、良かった。金のために、ミツルギを裏切れるはずが……ない」
山崎は、福村の問いかけに誘われるように、ぽつぽつと話し始めた。
先程のような混乱はなく、言葉を選ぶように、過去を思い出すように、少しずつ。
「ご家族の安全のためだったと?」
「そうとも……あの時は、そうするしかなかったんだ。そうでなければ、娘も妻も……無事ではなかった」
福村の目が細められた。山崎の発言に違和感を覚えたような、そんな表情だ。
彼は大量の書類の中から一枚抜き取り、それを見ながら何かを思案している。
「脅されていた、ということですか?」
福村が探るように低い声で尋ねると、山崎は目を大きく見開いて黙り込んだ。
山崎の視線が福村と麻里の間を行ったり来たりしている。何かを躊躇しているように見えた。
「山崎さん。福村先生はミツルギ工業の代理で来られていますけど、ミツルギ工業が探しているのは当時の真実。決して偽りの罪を山崎さんに背負わせたりしませんよ。……そうですよね、福村先生?」
麻里の言葉に福村は露骨に顔をしかめた。そしてしばらくの沈黙の後、小さく口を開いた。
「弁護士は真実ではなく、依頼主の利益を守るのが仕事です。ですが……山崎さんが主犯ではないと分かれば、賠償を請求したりはしません。しかるべき相手に請求するでしょう」
苦々しい表情から発せられた言葉に、麻里は内心微笑んだ。
(相変わらずこういうところは正直ですね、福村先輩は)
山崎を誘導するために分かりやすい甘い言葉を言ったりしない。弁護としての信念を曲げず、最大限山崎からの信頼を得るために譲歩した発言だったのだろう。
だが、それでは山崎には伝わらない。
「ほら。福村先生も山崎さんが主犯じゃないかもしれないと考えているんですよ」
麻里が砕いて説明すると、山崎の警戒心が少しだけ緩んだ。
「……おどされて、いたんだ。娘と妻が『どうなるか分からない』と」