【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
 これまで山崎にはひどい妄想の症状は出ていなかったし、何より、これが妄想ならば、最初から福村にも話していた可能性が高い。
 麻里の勘がこれは嘘ではないと告げていた。

(でも……福村先輩はどう捉えるかしら?)

 麻里が福村を見ると、彼は真剣な表情で山崎を見定めるかのようにじっと見つめていた。

「日記、ですか」

 福村の声が低く響く。
 そう呟いたきり、黙り込んでしまう。

「福村先生?」

 麻里が声をかけると、福村は小さく首を振った。

「分かりました。今日のところはここまでにしましょう。山崎さん、突然の訪問にもかかわらず、貴重なお話をありがとうございました。またお伺いさせてください」

 山崎は小さく頷いた。不安げな瞳が福村を見つめている。

「ご安心ください。山崎さんの今日の証言を不用意に拡散させたりしませんよ。しかし、ミツルギ工業の代理人として、もう少しお話をうかがいたいのです」
「あぁ……分かった。なにか思い出したら、書き留めておこう。もう、忘れないように」
「ありがとうございます」

 福村がテーブルに広げた書類を片付け始めると、山崎の視線が麻里へと移された。

「佐倉さん、また明日も来てくれるのかい?」

 麻里は山崎の隣で優しく微笑み、その強張った肩をそっと撫でた。

「はい、もちろんですよ。明日はお散歩の日ですからね。たくさんお話ししましょう。今日は少し疲れちゃいましたね。お部屋でゆっくり休みましょう。ああ、お薬は忘れないようにお願いします。……福村先生、どうぞお帰りになってください。お見送り出来ず、申し訳ありません」

 麻里は山崎をリビングのソファから立たせ、寝室のベッドへと連れていく。
 薬を飲ませて彼が落ち着いたのを見届けてから、居間へと戻る。

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