【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
その後、山崎に縁側で休んでもらうことにして、麻里と福村は居間の隅にある古いチェストの前へと移動した。
長い年月を経て色が濃くなったチェストにはほとんど埃はない。艶もまだ残っていた。
(少し前まできちんと手入れしていたんだわ)
麻里はしゃがみ込み、中段にある小さな装飾が施された引き出しの金具に目を凝らす。
そこには小さな鍵穴がひっそりと口を開けていた。
「多分ここに……」
「あぁ。間違いないな」
麻里の手が緊張で微かに震える。
真鍮の鍵を鍵穴に差し込むと、驚くほど滑らかに奥まで吸い込まれていった。
カチャリ、と乾いた金属音が静かな居間に響く。
ゆっくりと引き出し取っ手を引くと、中には子供の描いた絵や、手紙が入っているだけだった。
(ここじゃ、なかったの?)
麻里は落胆し、申し訳なさそうに福村を見た。
すると彼は麻里の横に膝をつき、長い指先で引き出しの内側の側面をコンコンと叩いた。
「音が違う。一度この引き出しを完全に枠から引き抜いてくれ」
「え? は、はいっ」
麻里が引き出しを丸ごと引っ張り出すと、福村がチェストの奥の空洞に手を伸ばした。奥の床板に触れ、何かのストッパーをカチリと押し下げる。するとチェストの底板が二重構造になっており、手前にすうっとスライドして外れたのだ。
「……隠し底だな」
福村の低い声に、麻里は息を呑んだ。
外された底板の隙間から現れたのは、少し破れかかった一冊の黒い日記帳だった。
そして、その上にぽつんと置かれた小さな黒いボイスレコーダーが存在感を主張していた。
(これが八年前の証拠となるかもしれない)
八年もの間、誰の目にも触れることなく眠り続けていた遺品。当時の山崎の執念が詰まっているような気がした。
麻里はそっとそれらを手に取ると、心臓が早鐘のように脈打ち始めた。
「山崎さんより先に確認した方が良いかもしれません。内容が内容ならば、取り乱してしまうでしょうから」
「そうだな、俺の車に移動しようか。あそこなら聞こえない」
「はい」
麻里は山崎に声をかけ、チェストの鍵を閉めてから、福村とともに玄関に停められた彼の車へと向かう。
車のドアがバタンと閉まると外の雑音は完全に遮断され、本革の匂いが漂う静寂が二人を包んだ。
助手席に座った麻里の手には、古い日記帳とボイスレコーダーが握りしめられている。福村は運転席から身を乗り出すようにして、麻里の手元を見つめていた。
「再生してくれるか?」
「はい……」
麻里がボイスレコーダーの再生ボタンを押し、音量を少し絞る。
直後、スピーカーからジリジリとした不快なノイズが流れ、それに続いて信じられないほど卑劣な男の怒鳴り声が車内に響き渡った。
長い年月を経て色が濃くなったチェストにはほとんど埃はない。艶もまだ残っていた。
(少し前まできちんと手入れしていたんだわ)
麻里はしゃがみ込み、中段にある小さな装飾が施された引き出しの金具に目を凝らす。
そこには小さな鍵穴がひっそりと口を開けていた。
「多分ここに……」
「あぁ。間違いないな」
麻里の手が緊張で微かに震える。
真鍮の鍵を鍵穴に差し込むと、驚くほど滑らかに奥まで吸い込まれていった。
カチャリ、と乾いた金属音が静かな居間に響く。
ゆっくりと引き出し取っ手を引くと、中には子供の描いた絵や、手紙が入っているだけだった。
(ここじゃ、なかったの?)
麻里は落胆し、申し訳なさそうに福村を見た。
すると彼は麻里の横に膝をつき、長い指先で引き出しの内側の側面をコンコンと叩いた。
「音が違う。一度この引き出しを完全に枠から引き抜いてくれ」
「え? は、はいっ」
麻里が引き出しを丸ごと引っ張り出すと、福村がチェストの奥の空洞に手を伸ばした。奥の床板に触れ、何かのストッパーをカチリと押し下げる。するとチェストの底板が二重構造になっており、手前にすうっとスライドして外れたのだ。
「……隠し底だな」
福村の低い声に、麻里は息を呑んだ。
外された底板の隙間から現れたのは、少し破れかかった一冊の黒い日記帳だった。
そして、その上にぽつんと置かれた小さな黒いボイスレコーダーが存在感を主張していた。
(これが八年前の証拠となるかもしれない)
八年もの間、誰の目にも触れることなく眠り続けていた遺品。当時の山崎の執念が詰まっているような気がした。
麻里はそっとそれらを手に取ると、心臓が早鐘のように脈打ち始めた。
「山崎さんより先に確認した方が良いかもしれません。内容が内容ならば、取り乱してしまうでしょうから」
「そうだな、俺の車に移動しようか。あそこなら聞こえない」
「はい」
麻里は山崎に声をかけ、チェストの鍵を閉めてから、福村とともに玄関に停められた彼の車へと向かう。
車のドアがバタンと閉まると外の雑音は完全に遮断され、本革の匂いが漂う静寂が二人を包んだ。
助手席に座った麻里の手には、古い日記帳とボイスレコーダーが握りしめられている。福村は運転席から身を乗り出すようにして、麻里の手元を見つめていた。
「再生してくれるか?」
「はい……」
麻里がボイスレコーダーの再生ボタンを押し、音量を少し絞る。
直後、スピーカーからジリジリとした不快なノイズが流れ、それに続いて信じられないほど卑劣な男の怒鳴り声が車内に響き渡った。