【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
「山崎さんの日記帳がまだ残ってるだろう? このボイスレコーダーに足りないピースが、ここには書かれているかもしれない」
「そう、ですね」

 福村の力強い言葉に、麻里の胸の奥にも希望の光が戻ってくる。

(私ったら、随分と感情的になってしまっていたわ。もう一つの重要な証拠を見ずに絶望するだなんて)

 自分の足りない部分を自覚させられる。すぐには変われないが、今は隣に福村がいる。
 それがとても心強く感じた。

「山崎さんの日記、一緒に確認しましょう!」

 麻里は日記帳を開いた。

『シンセイ開発が、ミツルギの情報を持ってくれば役員として迎え入れるとオファーしてきた。そんな要求、呑む奴などいないだろう』
『シンセイ開発のスカウトは随分と強引だ。ついに家にまでやって来た。追い返すと、翌日から怪しい車に梓が追い回されるようになった……一体どうすれば』
『今日やって来た奴らは間違いなくシンセイ開発の息がかかっているはずだ。だが、それをどうやって証明すればいい? もう時間がない……妻と娘が危険な目に遭うくらいなら……』
『今日、奴らがメモリを取りに来た。あぁ……私は会社を裏切った。奴らが乗って来た車はシンセイ開発の社用車だった。今さらもう遅いが、この画像をこの日記とともに取っておこう。いつか必ず告発する。娘と妻の安全が確保できればいつか……』

 そこには山崎の筆跡で、彼が味わった絶望の日々と、いつか反撃するために残した希望が書き残されていた。

 最後のページに挟まっていたのは、印刷用紙に写されたカラー写真だった。
 だいぶ粗い画像だったが、この家の玄関先に停められている車とそこに乗り込むガラの悪い男が写っていた。そしてその車には、確かにシンセイ開発のロゴがあった。

「これはっ……!」
「ついに尻尾を掴んだな」

 福村の声がいつもより低く、獰猛さを帯びていた。
< 34 / 59 >

この作品をシェア

pagetop