【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
「そ、それじゃあ我が家のこと……父のこと、ご存じだったんですか?」
「あぁ。あの事件がきっかけで麻里の父が会社を退職していたことを知り、納得したよ。だが諦めきれなかった。だから……弁護士になって、ミツルギ重工の担当になることを目指したんだ。八年前、本当は何があったのか、社員達が辞めさせられたのは正当だったのかを明らかにするために」

(そんなの……まるで私のためみたい……)

 うぬぼれだと自覚していたが、福村の行動はまるで――。

「どうしてですか? どうしてそこまで……」
「麻里が好きだから。情けないことに、失って初めて気がついたんだ。もう君を失いたくない」

 福村の言葉に、麻里は時が止まったかのように固まった。
 八年前に諦めた淡い初恋。その相手が今、目の前で麻里に好意を告げてきたのだから。

(夢じゃ、ない)

 麻里に触れている彼の指先から伝わる熱が、現実だと告げている。

「わ、私……大学を辞める時、絶望していたんです。でも、福村先輩が『優しさで誰かを救えるはずだから』って言ってくださったから頑張れたんです。弁護士や検事じゃなくても誰かを助けられるって、信じられたんです。……福村先輩が、好きだったから」

 最後は涙が込み上げ、声がかすれてしまう。
 それでも麻里が思いを告げると、カチリとシートベルトが外れる音とともに福村にぐっと引き寄せ、抱き締められた。

「もう麻里が去っていくのを黙って見送るのは耐えられない。俺と付き合ってくれるか?」
「はい。私も、先輩と一緒にいたいですっ……!」

 麻里が震える手で彼の背に手を回すと、彼の腕の力が強くなる。
 二人は長い時間抱き合っていたが、麻里がふと福村を見つめると、彼の唇が麻里の唇に触れた。
 軽く触れるだけのキスに、麻里の顔は沸騰するほど熱くなった。

「あのっ……せ、先輩」
「正樹」
「ま、正樹さん」

 目の前の彼の名を口にする。
 すると正樹の顔がふわっとほころんだ。

(こんな顔、するんだ……)

 大学時代にも見たことがなかった柔らかく甘い微笑み。
 麻里が思わず見とれていると、正樹がもう一度麻里の唇に口づけをした。



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