【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
それから数日後。連日、雲一つない穏やかな小春日和が続いていた。
それなのに、麻里の心には、不安が立ち込めていた。
(今日もいる。気のせい……じゃないわよね、やっぱり)
山崎宅を訪れるためにいつもの路地を歩いていた麻里は、周囲の様子に微かな違和感を覚えて足を止めた。
この辺りは古くからの住宅街で、昼間は高齢者がたまに行き交う程度のひどく静かな場所のはずだった。それなのにここ数日、山崎宅の近くに見慣れぬ車が停まっていることが増えた。
(車だけじゃない)
麻里は山崎の屋敷に着くと、ポストを開ける。
普段は新聞と回覧板が入っている程度のそこに、これまでに見たこともないようなチラシが、無理やり押し込まれている。
手に取ってみると、「不動産即金買取」「老朽化家屋のリフォーム」「土地売却のご相談」といった業者のダイレクトメールばかりだ。
(どうして急にチラシが増えたのかしら? 山崎さんが引っ越す予定もないのに……)
不審に思いながら家の中に入った麻里はチラシをまとめて室内のゴミ箱へ捨て、いつものように山崎へ声をかける。
しかし、異変はそれだけに留まらなかった。
――ピンポーン。
午後のおやつの準備をしていると、静かな屋敷にインターホンの音が鳴り響いた。
麻里が玄関を開けると、そこには派手な蛍光色の作業着を着てヘルメットを被った男が立っていた。
手には『ご挨拶』と書かれたティッシュと一枚の用紙を持っている。
「あ、すんません。この先の道路でちょっとした配管工事やるもんで、ご挨拶に来ましたー。家主の方は? ちょっと直接、ご説明とお詫びをしたいんですが」
男は愛想よく笑っているが、その目は全く笑っていない。それどころか麻里の身体の隙間から室内の様子を覗き込もうと、視線をあちこちへ激しく彷徨わせている。
「……家主は今、体調を崩して休んでおります。私が承りますので、そちらの書面だけ置いていってください」
麻里が毅然とした態度でそう告げると、男はチッと微かに舌打ちをし「あぁ、そう。じゃあ、これ」とティッシュと書類を乱暴に押し付け、背を向けて去っていった。
その歩き方や雰囲気には一般的な工事専門業者の持つ実直さが微塵もなく、どこかガラの悪さが滲み出ていた。
受け取った書類をちらりと見ると、太陽光発電の設置案内で近隣工事の話は全く書かれていない。
(またか……。最近流行りの訪問販売? やり口が強引なんだから)
同様の工事の挨拶や飛び込みの営業を名乗る不審な訪問者が、昨日から今日にかけて既に三回も繰り返されている。
高齢者の家を狙う空き巣もいるらしいし、麻里はピリピリとしていた。
それなのに、麻里の心には、不安が立ち込めていた。
(今日もいる。気のせい……じゃないわよね、やっぱり)
山崎宅を訪れるためにいつもの路地を歩いていた麻里は、周囲の様子に微かな違和感を覚えて足を止めた。
この辺りは古くからの住宅街で、昼間は高齢者がたまに行き交う程度のひどく静かな場所のはずだった。それなのにここ数日、山崎宅の近くに見慣れぬ車が停まっていることが増えた。
(車だけじゃない)
麻里は山崎の屋敷に着くと、ポストを開ける。
普段は新聞と回覧板が入っている程度のそこに、これまでに見たこともないようなチラシが、無理やり押し込まれている。
手に取ってみると、「不動産即金買取」「老朽化家屋のリフォーム」「土地売却のご相談」といった業者のダイレクトメールばかりだ。
(どうして急にチラシが増えたのかしら? 山崎さんが引っ越す予定もないのに……)
不審に思いながら家の中に入った麻里はチラシをまとめて室内のゴミ箱へ捨て、いつものように山崎へ声をかける。
しかし、異変はそれだけに留まらなかった。
――ピンポーン。
午後のおやつの準備をしていると、静かな屋敷にインターホンの音が鳴り響いた。
麻里が玄関を開けると、そこには派手な蛍光色の作業着を着てヘルメットを被った男が立っていた。
手には『ご挨拶』と書かれたティッシュと一枚の用紙を持っている。
「あ、すんません。この先の道路でちょっとした配管工事やるもんで、ご挨拶に来ましたー。家主の方は? ちょっと直接、ご説明とお詫びをしたいんですが」
男は愛想よく笑っているが、その目は全く笑っていない。それどころか麻里の身体の隙間から室内の様子を覗き込もうと、視線をあちこちへ激しく彷徨わせている。
「……家主は今、体調を崩して休んでおります。私が承りますので、そちらの書面だけ置いていってください」
麻里が毅然とした態度でそう告げると、男はチッと微かに舌打ちをし「あぁ、そう。じゃあ、これ」とティッシュと書類を乱暴に押し付け、背を向けて去っていった。
その歩き方や雰囲気には一般的な工事専門業者の持つ実直さが微塵もなく、どこかガラの悪さが滲み出ていた。
受け取った書類をちらりと見ると、太陽光発電の設置案内で近隣工事の話は全く書かれていない。
(またか……。最近流行りの訪問販売? やり口が強引なんだから)
同様の工事の挨拶や飛び込みの営業を名乗る不審な訪問者が、昨日から今日にかけて既に三回も繰り返されている。
高齢者の家を狙う空き巣もいるらしいし、麻里はピリピリとしていた。