【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
(正樹さん? それとも……)

 立ち上がって玄関に向かおうとするが、足がすくむ
 すると、控えめに玄関のドアが叩かれた。

「麻里! いるか?」
「正樹さんっ!」

 正樹の声に安堵し玄関を開けると、彼はさっと入って扉を閉めた。

「怪しい車は去った。一応ナンバーも控えてある」
「良かった。もしかしたら山崎さんを狙ってるんじゃないかって……」

 麻里が最近起こった不審な点について話すと正樹の表情が険しくなる。

「今、警備を呼んでいる。しばらくの間、この屋敷の周辺をパトロールさせる。山崎さんの娘さんにも許可を取った」
「そんなことまで……? わ、私の思い違いかもしれませんよ?」
「いいや。シンセイ開発の奴らは、ミツルギ重工が当時の証拠を見つけ出したことに気づいたんだろう。こちらにも昨日、最近サイバー攻撃が増えていると報告があった」
「そんな……じゃあ、山崎さんは……」

 最悪の予想が的中し、麻里は全身が冷たくなっていく。
 すると福村の大きな手のひらが麻里の背中を優しく包み込んだ。彼の胸の鼓動が伝わってくる。麻里よりも速い鼓動だ。



 その後、正樹が手配した警備員が到着し周辺警備を依頼すると、麻里は正樹とともに彼の車に乗り込んだ。
 運転席の正樹を見ると、彼はハンドルを強く握りしめている。
 その横顔は、まるで怒りを押し込めているように見えた。

「麻里、シンセイ開発の出方が予想以上に早い。警備にも限界があるし、山崎さんを一人にしておくのは危険だ。一時的に安全な場所に移動してもらおうと思う。良い療養施設に心当たりがあるんだ」
「それが……良いと思います」

 今日のように悪意を持った誰かがやって来たら、麻里だけでは太刀打ちできない。
 山崎の安全が何よりも優先されるべきだろう。

(仕事はしばらくお役御免って感じね……)

 どこか施設に入るならば麻里の出る幕はない。寂しいような無力感がじわりと染み出てくる。
 麻里が黙り込むと、ちらりと正樹がこちらを見た。

「俺が心配しているのは山崎さんだけじゃない。麻里の安全も確保しなければな」
「え? わ、私……?」
「シンセイ開発の息がかかったチンピラどもに顔が割れている。気をつけることに越したことはない」
「それはそうかもしれませんが……でも、私は療養施設には入れませんし」

 麻里がそう呟くと、正樹はふっと口角を上げた。

「安心しろ。とっておきの場所がある」
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