【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
 どのくらいそうしていただろうか。
 麻里がそっと正樹から身体を離すと、彼が柔らかい表情で麻里を見つめいていた。

(私ったら正樹さんになんてことをっ……)

 急に恥ずかしくなり顔を逸らそうとすると、彼に顎を掴まれた。
 そのまま軽い口づけをされる。

「なっ……!」
「涙、止まったな」

 正樹は笑いながらそっと身体を離し、眼鏡を外してリビングのテーブルに置いた。
 そしてカフスボタンを外してシャツの袖を肘のあたりまでたくし上げ、首元のボタンをいくつか緩める。見慣れていた隙のないスーツ姿が、どんどんとラフになっていく。

 麻里は思わず目を逸らしたが、心臓がドキドキと音をたてていた。

「さて、この家で暮らしてもらうにあたって、いくつか注意事項がある」
「な、何でしょう……?」

 胸を押さえながら尋ねると、彼は真剣な眼差しで麻里を見つめた。

「安全が完全に確保されるまで外出は最小限にしてくれ。買い物や必要な手続きは、すべて俺の事務所かケータリングで手配する。出来るなら仕事もしばらくは休職してほしい」
「休職、ですか? 確かに山崎さんのお宅しか担当していなかったので、しばらく仕事はありませんけど……でも、サポートとかで臨時の介護に向かうこともあって……」

 麻里は思わぬ要求にしどももどろになりながら答えた。

(そこまでしなくても……シンセイ開発の狙いは山崎さんで、そもそも私は無関係なのだし)

 しかし反論しようにも、正樹が真面目な表情で「事務所名義で長期休暇の依頼かけるから心配しなくていい」などと言い出すので、麻里は驚いて言葉を詰まらせた。

「えっと、そこまでする必要は……」
「シンセイ開発は八年前の真実を隠蔽するためなら何でもするだろう。隙を見せたくない。しばらくは不便だろうが、少しの間だけ我慢してくれ」

 事件解決のため。
 そう言われては断れない。麻里は呆然としながら小さく頷いた。

 正樹は安堵の表情をうかべ、麻里に手を差し出した。

「麻里の部屋を案内していなかったな。こっちだ」

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