【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
八年前。ただの理想論として未熟な知識で叫んでいた自分。
しかし大学を中退し、介護の世界で過酷な現実を目の当たりにしたからこそ、昔とは違う捉え方が出来る。それに山崎さんの「家族を守るための苦渋の選択」を目の当たりにしたからこそ、「意思表示の瑕疵」や「強迫」という言葉の重みを感じていた。
(法律は完璧でない。だからこそ、弁護士や検事、裁判官がいるのよね)
介護士として他者の人生に寄り添ってきた今、法律とそれを扱う人々が、どれほど人間の尊厳を守るために重要なのかが痛いほどによく分かった。
かつて絶望の中で手放したはずの「法で人を救う」ということへの情熱が、麻里の胸の奥でかすかに再燃し始めていた。
教科書以外の本にも手を伸ばしメモを取りながら黙々と読んでいると、カチャリと書斎の扉が開く音が聞こえた。
顔を上げると、長い会議を終えた正樹がリビングへと戻ってくるところだった。彼の顔には疲労がにじみ出ている。
「お疲れ様です」
すると正樹は、奇妙なものでも見たかのような表情をした。
「どうされましたか? ……あっ、すみません。本棚の本を勝手にお借りしてしまいました。懐かしい教科書があったものだから読んでいたら、他の本も気になって……」
麻里が読んでいた本を閉じて本棚に戻そうと立ち上がると、彼は麻里の腕を掴んだ。
「今までずっとか?」
「え?」
麻里が首を傾げると、正樹が時計を指差す。
もう五時間以上経っている。慌てて窓の外を見ると、日もすっかり落ちていた。
「え! もうこんな時間? すみません、ご飯がまだ……」
「そんなことは良い」
正樹は麻里の書いていたメモ用紙をじっと見つめている。
「あの……」
「麻里、もしその気があるなら頼みがあるんだ」
彼は麻里の肩に手を置くと、真剣な眼差しで麻里を見つめた。
しかし大学を中退し、介護の世界で過酷な現実を目の当たりにしたからこそ、昔とは違う捉え方が出来る。それに山崎さんの「家族を守るための苦渋の選択」を目の当たりにしたからこそ、「意思表示の瑕疵」や「強迫」という言葉の重みを感じていた。
(法律は完璧でない。だからこそ、弁護士や検事、裁判官がいるのよね)
介護士として他者の人生に寄り添ってきた今、法律とそれを扱う人々が、どれほど人間の尊厳を守るために重要なのかが痛いほどによく分かった。
かつて絶望の中で手放したはずの「法で人を救う」ということへの情熱が、麻里の胸の奥でかすかに再燃し始めていた。
教科書以外の本にも手を伸ばしメモを取りながら黙々と読んでいると、カチャリと書斎の扉が開く音が聞こえた。
顔を上げると、長い会議を終えた正樹がリビングへと戻ってくるところだった。彼の顔には疲労がにじみ出ている。
「お疲れ様です」
すると正樹は、奇妙なものでも見たかのような表情をした。
「どうされましたか? ……あっ、すみません。本棚の本を勝手にお借りしてしまいました。懐かしい教科書があったものだから読んでいたら、他の本も気になって……」
麻里が読んでいた本を閉じて本棚に戻そうと立ち上がると、彼は麻里の腕を掴んだ。
「今までずっとか?」
「え?」
麻里が首を傾げると、正樹が時計を指差す。
もう五時間以上経っている。慌てて窓の外を見ると、日もすっかり落ちていた。
「え! もうこんな時間? すみません、ご飯がまだ……」
「そんなことは良い」
正樹は麻里の書いていたメモ用紙をじっと見つめている。
「あの……」
「麻里、もしその気があるなら頼みがあるんだ」
彼は麻里の肩に手を置くと、真剣な眼差しで麻里を見つめた。