【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
「麻里」
「な、なんでしょう?」
先程の鋭い目付きは消え、甘く名前を呼ばれる。
麻里が思わず後ずさると、彼は麻里の腰をぐっと引き寄せた。
驚いて口をポカンと開けていると、そこに彼の唇が重なる。
溺れそうなほど深い口づけに、麻里は思わず正樹のシャツを握りしめた。
「っ……! 正樹さん!」
麻里が息を切らしながら抗議の声を上げると、彼は楽しそうに微笑んで麻里の髪をさらりと撫でた。
「何を考えていたかは大体分かるが……俺は麻里を守るためなら何でもすると決めたんだ。傷つける奴には容赦しない。……幻滅したか?」
「するわけないです! ちょっと怖かったですけど、頼もしいって思っていますから!」
自嘲気味笑う正樹に麻里が間髪いれずに答えると、彼は目を見開いた。
そしてふっと表情を和らげると、麻里にもう一度キスをした。
木下周辺の資金回りを調査すると決めてからの正樹の動きは、冷徹かつ迅速だった。
麻里の着眼点をもとに、弁護士の権利と事務所が持つ独自の調査ルートを総動員し、木下個人の周辺資産を徹底的に洗わせた。
それから三週間後。予想よりも早く結果が表れた。
八年前、木下が親族名義で設立していた実体のない経営コンサルタント会社に対して、シンセイ開発から多額の『コンサルタント料』が支払われていたことが明らかになった。
それだけではない。そのコンサルタント会社から毎月、『業務委託費』として半グレ団体への資金提供が確認されたのだ。それは山崎を脅していた人物が所属する団体なのだということも突き止めた。
「これで言い逃れはできない」
正樹は大量の書類をまとめながら麻里に微笑んだ。
数日後の夜。正樹は完成した一通の書面をデスクに置いた。
それは、シンセイ開発および代理人である木下弁護士個人へ宛てた『内容証明郵便』の写しだった。
書面には、八年前の不正会計および情報流出に関する損害賠償請求だけでなく、現在進行形で行われている山崎徳三郎への強迫罪、および不法な資金移動による組織犯罪処罰法違反の可能性について書き連ねられていた。
「これを明日、シンセイ開発の社長室と木下の事務所に直接送り届ける。鳳法律事務所およびミツルギ重工からの公式な最後通牒だ」
麻里はそれらの書類を手に取り、まじまじと眺めた。
(こんな短期間で用意するなんて……!)
「すごい……」
麻里が思わず感嘆の声を上げると、正樹は眼鏡を押し上げながら満足げに笑みを浮かべた。
「木下なら、この内容証明がハッタリではないことくらい嫌というほど理解できるだろう。……麻里のおかげだ。ありがとう」
正樹が麻里をまっすぐ見つめ、そして深く頭を下げた。
「そんな……感謝するのはこちらの方です! 私なんて思いつきの案を話しただけで、実行してくれたのは正樹さんです。私には資格もないし、そんなこと出来ませんから……」
麻里が笑いながら俯くと、彼の手が頭にそっと触れた。
「今回の調査は、まぎれまなく麻里のおかげなんだ。それは胸を張るべきだ。麻里が法律を学び直し、俺の無茶な要求に答えてくれたから成しえたことだろう?」
「そうでしょうか……?」
「あぁ。山崎さんにも進捗を手紙で知らせよう。きっと麻里のおかげだと喜んでくれる」
正樹の言葉で、麻里の脳裏に山崎の笑顔が浮かんだ。
「私、山崎さんにはまた平穏な日々に戻ってほしいんです。少しでもそのための力になれたのなら嬉しいです」
麻里は小さく微笑みながら、正樹の胸にそっと頭を寄せる。
すると彼はなにも言わずそっと麻里を抱き締めた。
「な、なんでしょう?」
先程の鋭い目付きは消え、甘く名前を呼ばれる。
麻里が思わず後ずさると、彼は麻里の腰をぐっと引き寄せた。
驚いて口をポカンと開けていると、そこに彼の唇が重なる。
溺れそうなほど深い口づけに、麻里は思わず正樹のシャツを握りしめた。
「っ……! 正樹さん!」
麻里が息を切らしながら抗議の声を上げると、彼は楽しそうに微笑んで麻里の髪をさらりと撫でた。
「何を考えていたかは大体分かるが……俺は麻里を守るためなら何でもすると決めたんだ。傷つける奴には容赦しない。……幻滅したか?」
「するわけないです! ちょっと怖かったですけど、頼もしいって思っていますから!」
自嘲気味笑う正樹に麻里が間髪いれずに答えると、彼は目を見開いた。
そしてふっと表情を和らげると、麻里にもう一度キスをした。
木下周辺の資金回りを調査すると決めてからの正樹の動きは、冷徹かつ迅速だった。
麻里の着眼点をもとに、弁護士の権利と事務所が持つ独自の調査ルートを総動員し、木下個人の周辺資産を徹底的に洗わせた。
それから三週間後。予想よりも早く結果が表れた。
八年前、木下が親族名義で設立していた実体のない経営コンサルタント会社に対して、シンセイ開発から多額の『コンサルタント料』が支払われていたことが明らかになった。
それだけではない。そのコンサルタント会社から毎月、『業務委託費』として半グレ団体への資金提供が確認されたのだ。それは山崎を脅していた人物が所属する団体なのだということも突き止めた。
「これで言い逃れはできない」
正樹は大量の書類をまとめながら麻里に微笑んだ。
数日後の夜。正樹は完成した一通の書面をデスクに置いた。
それは、シンセイ開発および代理人である木下弁護士個人へ宛てた『内容証明郵便』の写しだった。
書面には、八年前の不正会計および情報流出に関する損害賠償請求だけでなく、現在進行形で行われている山崎徳三郎への強迫罪、および不法な資金移動による組織犯罪処罰法違反の可能性について書き連ねられていた。
「これを明日、シンセイ開発の社長室と木下の事務所に直接送り届ける。鳳法律事務所およびミツルギ重工からの公式な最後通牒だ」
麻里はそれらの書類を手に取り、まじまじと眺めた。
(こんな短期間で用意するなんて……!)
「すごい……」
麻里が思わず感嘆の声を上げると、正樹は眼鏡を押し上げながら満足げに笑みを浮かべた。
「木下なら、この内容証明がハッタリではないことくらい嫌というほど理解できるだろう。……麻里のおかげだ。ありがとう」
正樹が麻里をまっすぐ見つめ、そして深く頭を下げた。
「そんな……感謝するのはこちらの方です! 私なんて思いつきの案を話しただけで、実行してくれたのは正樹さんです。私には資格もないし、そんなこと出来ませんから……」
麻里が笑いながら俯くと、彼の手が頭にそっと触れた。
「今回の調査は、まぎれまなく麻里のおかげなんだ。それは胸を張るべきだ。麻里が法律を学び直し、俺の無茶な要求に答えてくれたから成しえたことだろう?」
「そうでしょうか……?」
「あぁ。山崎さんにも進捗を手紙で知らせよう。きっと麻里のおかげだと喜んでくれる」
正樹の言葉で、麻里の脳裏に山崎の笑顔が浮かんだ。
「私、山崎さんにはまた平穏な日々に戻ってほしいんです。少しでもそのための力になれたのなら嬉しいです」
麻里は小さく微笑みながら、正樹の胸にそっと頭を寄せる。
すると彼はなにも言わずそっと麻里を抱き締めた。