【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
「正樹さん、こっちの整理終わりました。お茶でも淹れましょうか?」

 もどかしい気持ちを隠して極力明るく正樹に声をかけると、彼は作業の手を止めて麻里の方を向いた。

「助かるよ。俺も少し休憩しよう」

 正樹は立ち上がると、麻里の肩を抱いて書斎からリビングへと移動した。
 そのまま麻里はソファーに座らされる。

「あの、正樹さん? お茶なら私が……」

 そう言いかけた時、正樹が麻里に覆い被さるようにして麻里の顔を覗き込んだ。
 そして麻里の頬に手をあて、目の下をそっとなぞる。

 触れられたところが熱を帯びる。麻里の心臓はドキドキと鼓動を速めていた。

「疲れているな。無理はしないでくれ」
「え? わ、私は全然疲れてませんよ? それを言うなら正樹さんでしょう? 毎晩遅くまでお仕事をなさっているし……私なんかの百倍忙しいじゃないですか」

 正樹に心配をかけてしまったことが申し訳なく、無理やり口角をあげて笑みをつくる。
 すると彼は少しだけ悲しそうな表情を滲ませた。

「麻里。何を堪えているんだ? ……俺には言えないことか?」
「そんなことは、ないですけど」

 麻里が黙り込むと、正樹の手がするりと麻里の頬を撫でた。

「麻里」

 キスされそうなほどの距離で甘く名前を囁かれ、麻里の身体がびくりと跳ねた。
 麻里が白状するまで離す気はないようだ。

 耐えられなくなった麻里は「だって」と観念して口を開いた。

「正樹さんが頑張っているのに、私は出来ることがなくて。当然なんですけど。私はただの介護士だし、ここに裁判が落ち着くまでここに居候させてもらっている身ってだけですし……。せめて法学部を卒業していたらな、とか、パラリーガル(法律事務職員)だったらな、とか……どうしようもないことで落ち込んでいただけです!」

(あー! こんなウジウジしてるなんて知られたくなかったのに……なんで勘づかれちゃうの!?)

 しどろもどろになりながら、やけっぱちで白状すると、彼はぽかんと目を丸くしていた。

「そんなことを気にしていたのか?」
「そんなことじゃないです。私にとっては大事なことでっ」

 言い終わらないうちに、麻里は正樹に抱き締められていた。

「麻里は十分働いてくれているよ。今だって手伝ってくれているじゃないか」
「でも……」
「それに、まだ一番大事な役目が残っているだろう?」
「役目?」

 思わず正樹の顔を見あげると、彼は楽しそうに目を輝かせた。

「麻里。山崎さんの介護士として、当事者尋問で証言するんだ」
「え……?」

 正樹の提案に麻里は驚きで言葉を失った。

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