【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
「今回の民事訴訟、シンセイ開発との最大の鍵は、山崎さんの当時の『意思の真実性』だ。奴らは『山崎は自由意志で書類に署名した』と言い張るはずだ。山崎さんが直接否定出来れば良いが、彼が当事者尋問の場に立つのは困難だろう。だから麻里が証言するんだ。山崎さんが真実を語った時の状況。山崎さんが当時どれほど精神的に拘束され、恐怖によって認知能力を歪められていたかを。これは山崎さんに寄り添っていた麻里にしか出来ない」
「伝聞証拠にはなるでしょうけど……」

 麻里は重大な局面で自分の証言が必要なのだと聞いて、背筋が冷たくなった。

(もし私の証言で揚げ足をとられたら?)

 恐怖心が湧き上がる。
 けれどそれと同時に自分にしか出来ない役目であることも理解していた。

「私の証言だけでは信ぴょう性に欠けるかもしれません。……あ、でも介護記録に山崎さんが真実を話そうとしてパニックになった時のことを記録しています。直接的な表現は出来なかったので証拠としては弱いかもしれませんが、山崎さんの日記と合わせたら……」

 麻里がぶつぶつと呟きながら頭を整理していると、正樹が喉を鳴らして笑みを浮かべた。

「頼もしいな。俺が山崎さんを訪問した日も記録してある。すべて掛け合わせれば、信ぴょう性はかなり高まるはずだ。……やれるか?」 
「やれます。やらせてください!」

 気がつくと、麻里は叫ぶように答えていた。

「正直、尋問の場に証人として立つのは怖いです。でも山崎さんの思いを、この耳で聞いたことを、無駄にはしたくありません!」
「それでこそ俺の惚れた麻里だ」

 正樹は麻里の頭をくしゃくしゃと撫でると、勝ち気な笑みを浮かべた。

「よし、明日から証言の内容を整理しよう。麻里ならシンセイ開発や木下がぐうの音も出ないロジックで証言出来る。恐れる必要はない。俺がついてる」

 力強い言葉に微笑んだ。
 自信に溢れている彼は、麻里にとって最も頼もしく、愛おしい存在だった。


 
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