【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
 そして証人として証言の準備をする日々が始まった。

「当事者尋問が行われるのは刑事訴訟の判決が出た後だ。今からそんなに気合いをいれる必要はない。身体を壊すぞ」

 毎日遅くまで準備していた麻里に、正樹がストップをかけた。

「で、でも何かしてないと不安で……」
「長期戦だからな。無理をしたら本番で力が発揮できない」
「そう、ですよね……」

 調べものをしていた手を止め、麻里はそわそわと視線を動かした。
 するとため息をついた正樹が麻里の腕を掴んだ。

「真面目すぎるのも難儀だな。ほら、もう寝よう」

 ぐいぐいと腕を引かれ、気がつくと正樹の部屋に連れてこられていた。

「ちょっ……ここ、私の部屋じゃないんですが…」
「自室に戻したら麻里は寝ないだろう?」

 正樹は呆れたようにそう言うと、麻里を自分のベッドにゆっくりと押し倒した。

「ま、正樹さん……? あの、えっと、これは……」

 麻里がおろおろと戸惑っていると、正樹がふっと噴き出した。

「心配するな。まだ手を出したりしないから」

 正樹は麻里を抱き締めるようにして横になると、そのまま目を閉じた。

「おやすみ、麻里」
「……お、おやすみなさい?」

(寝られるわけないですけど!?)

 麻里は心の中で叫ぶと、ドキドキとうるさい心臓を落ち着けるために何度も深呼吸をする。
 すると、そのうち耳元で気持ち良さそうな寝息が聞こえたきた。

(正樹さん寝たの? ……やっぱり疲れているのね)

 彼の規則正しい寝息を聞いていると、自然と麻里の心臓も落ち着いてくる。
 そのまま目を閉じると、麻里もあっという間に意識を手放した。



 翌朝。麻里はそっと頭を撫でられる感覚で目が覚めた。

「すまない、起こしてしまったな。……おはよう」
「おはよう、ございます」

 幸せそうな微笑みを向けられ、麻里の顔が熱くなる。

「よく眠れたか?」
「はい……」

 麻里が布団に隠れながら頷くと、彼はくすくすと笑っていた。

「それなら、しばらくはこうして眠ることにしよう。お互い夜更かしが防止できる。良い案だと思わないか?」

 麻里が驚いて絶句していると、彼は楽しそうに朝の支度を始めた。
 そうして毎晩のルーチーンが決められてしまったのだった。



 その間にも刑事訴訟は進み、ついに判決が下された。
 シンセイ開発は不正競争防止法違反、木下は恐喝罪。
 シンセイ開発には法人として上限額に近い罰金刑が、木下には執行猶予のつかない懲役数年の実刑判決が、それぞれ下されることとなった。

 そして迎えた当事者尋問期日。
 麻里は控え室で一人、待たされていた。
 これから証人台に立って証言をする麻里は、尋問も傍聴することはできない。

(正樹さん、頑張ってください……)

 麻里は自分が呼ばれるまで、ただ祈り続けていた。
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