【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
「あなたがシンセイ開発から『正当な業務委託費』として受け取っていた資金。その送金があった日の深夜、あなたの個人口座から特定の海外ペーパーカンパニーを経由し、山崎徳三郎氏の自宅を執拗に監視していた半グレ団体のリーダー格の口座へと同額が送金されている。これはあなたが山崎徳三郎氏の監視を委託するための報酬ではないですか?」
「くっ……そ、それは、別件の費用で……!」
「別件とは? 明確に示してください。あなたはミツルギ重工を退職し、ライバル関係にあるシンセイ開発から仕事を請け負ったばかりでしたよね? さぞかし忙しかったことでしょう。別件を抱える余裕があったとは思えません」
「……いや、それは……」
「では報酬を支払ったことを認めるのですね?」
正樹の低い声が部屋中に響き渡った。
法廷の空気が凍りつく。傍聴席の人々もメモの手を止めてこちらを見ていた。
「山崎氏の残した日記にはシンセイ開発の強引なスカウトを断ったとたん、娘が怪しい車に追い回されるようになったと記されています。また、山崎氏のパソコンに『オルディナウス』のマスター情報を全て落とすように脅している音声データもあります。そこには『お前にとっちゃ会社の方が妻や娘の命より大事ってことか』などと脅迫していた事実が記録されていました」
正樹が日記のコピーや音声データの文字起こしを掲げると、傍聴席から小さなざわめきが広がった。
その声をBGMに正樹は続ける。
「シンセイ開発という組織が不当な利益を得るために、あなたをパイプ役として使い、情報流出を主導させた。そして弱みを握って山崎氏を脅迫し続けた。これが『一役員による個人の逸脱』ですか?」
正樹が静かに問いかけると、木下は声を失い顔を真っ青にしてガタガタと震え始めた。
「原告代理人、主尋問は以上ですか?」
裁判官の確認に、正樹はデスクの資料をスマートにまとめ、一礼した。
「はい。以上です」
「分かりました。それでは、原告側証人の佐倉麻里さんを入廷させてください」
***
「くっ……そ、それは、別件の費用で……!」
「別件とは? 明確に示してください。あなたはミツルギ重工を退職し、ライバル関係にあるシンセイ開発から仕事を請け負ったばかりでしたよね? さぞかし忙しかったことでしょう。別件を抱える余裕があったとは思えません」
「……いや、それは……」
「では報酬を支払ったことを認めるのですね?」
正樹の低い声が部屋中に響き渡った。
法廷の空気が凍りつく。傍聴席の人々もメモの手を止めてこちらを見ていた。
「山崎氏の残した日記にはシンセイ開発の強引なスカウトを断ったとたん、娘が怪しい車に追い回されるようになったと記されています。また、山崎氏のパソコンに『オルディナウス』のマスター情報を全て落とすように脅している音声データもあります。そこには『お前にとっちゃ会社の方が妻や娘の命より大事ってことか』などと脅迫していた事実が記録されていました」
正樹が日記のコピーや音声データの文字起こしを掲げると、傍聴席から小さなざわめきが広がった。
その声をBGMに正樹は続ける。
「シンセイ開発という組織が不当な利益を得るために、あなたをパイプ役として使い、情報流出を主導させた。そして弱みを握って山崎氏を脅迫し続けた。これが『一役員による個人の逸脱』ですか?」
正樹が静かに問いかけると、木下は声を失い顔を真っ青にしてガタガタと震え始めた。
「原告代理人、主尋問は以上ですか?」
裁判官の確認に、正樹はデスクの資料をスマートにまとめ、一礼した。
「はい。以上です」
「分かりました。それでは、原告側証人の佐倉麻里さんを入廷させてください」
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