【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
 それから一ヶ月後。判決が下された。
 シンセイ開発にも木下にも損害賠償金の支払いが命じられた。

『ミツルギ重工側完全勝利』

 そんな見出しが新聞の一面を飾っていた。
 苦境に喘ぎ続けたミツルギ重工の無念と山崎の苦しみが、ようやく報われたのだ。

「本当に……終わったんですね」

 麻里はこれまで張り詰めていた緊張の糸が切れ、ソファーに深く座り込んだまま新聞を眺めていた。

「予想通りの判決だ」

 正樹は麻里の隣に座ると麻里の両手をそっと自分手で包み込んだ。
 彼の体温がじわりと伝わってくる。

「でも正樹さん、嬉しそうです」
「当たり前だ。この事件を解決するために、この八年間を捧げていたんだ。だが……麻里がいなかったら結末は違っていただろう。麻里の山崎さんへの献身と法廷での完璧な証言が、この判決を導いたんだ。ありがとう」

 眼鏡の奥の瞳が柔らかく揺らめいている。
 麻里の瞳も同じように揺らいだ。

「正樹さん……」

 麻里の目から、じわじわと涙が溢れ出す。

(八年前、全部捨てたはずだった……。それなのに今、あの頃欲していた全てがここにある)

 介護士としてもがき続けた日々は、何一つ無駄ではなかった。
 
「正樹さんと再会できて、本当に幸せです!」

 麻里が正樹に抱きつくと、彼が力強く麻里を抱き締める。
 二人はしばらく抱き合った後、笑いあった。麻里の顔は涙でぐしゃぐしゃだったが、正樹が愛おしそうにその涙を拭う。

「俺も、幸福を噛み締めているよ」

 二人の唇がそっと重なった。
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