【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
「あの、どうでしょうか……?」
麻里は気恥ずかしさに身を縮めながらおずおずと試着室から出た。
深みのある紺色が麻里の肌を鮮やかに際立たせてくれている。動くたびに室内の照明を浴びて、シルクの艶やかな生地がしっとりと上品な光沢を放っていた。
正樹はソファーから立ち上がり、無言で麻里に近づいてくる。
何も言わずにただじっと見つめられると、落ち着かない気分に拍車がかかる。
「正樹さん……? えーっと、やっぱり、私には似合いませんよね……」
「いや? 似合うよ」
正樹はそう言うと麻里の首に手を回した。首筋に彼の指が触れ、思わず目を閉じる。
彼のビターな香水の香りが鼻をくすぐった。
「あっ、これ……」
彼の手が離れると同時に目を開けると、麻里の首もとにはシンプルな一粒パールのネックレスが添えられていた。
「この方が良い。このまま家に連れて帰って、誰の目にも触れさせたくないくらい綺麗だ」
正樹はくすりと笑みを漏らすと、麻里の額にそっと唇を落とした。
「なっ……もう、正樹さん! コンシェルジュの方がいるのに……」
「誰もいない。俺が下がらせた」
「え? ……本当だ」
確かに辺りには誰もいない。
麻里はようやく肩の力を抜いて安堵のため息をついた。
すると正樹は「良い表情になった」とまた微笑んでいた。
「もっと見ていたいが、箍が外れそうだ。そろそろ行くとしよう」
麻里は再び正樹にエスコートされて、ブティックを後にした。
夕方に差し掛かる頃、二人が到着したのは高層ビルの最上階にある会員制ラウンジだった。
エントランスには看板すらなく、専用の暗証番号と生体認証を経て進むその空間は、全面が天井から床までの大きなガラス窓になっていた。
眼下には、遮るものが何一つない東京のパノラマが広がっている。ちょうど日が傾き始め、空色がオレンジ色に溶けていくところだった。
「すごい……! 綺麗ですね」
「喜んでもらえて良かった。ここなら麻里と静かに過ごせると思ったんだ」
半個室のようなソファー席に案内されると、すぐにシャンパンが二人のグラスに注がれる。
「乾杯」
「……か、乾杯」
二人でグラスを掲げ合い、グラスに口をつける。心地よい芳醇な香りと炭酸の刺激が心地よい。
「ふふっ……こうして二人で飲むのは久しぶりですね。山崎さん達とテレビ通話した時以来でしょうか」
麻里が懐かしむように微笑むと、正樹も目を細めて頷いた。
「そうだったな。……付き合ってすぐ俺の家に籠らせてしまったから、こうして外で飲むのは初めてか。窮屈な思いをさせてしまって申し訳なかった」
「謝らないでください! 正樹さんのお気遣いのおかげで安全に過ごせたんですから、感謝しかないです」
「だが、訴訟が終わった後もバタバタしてデートも出来なかった。反省しているんだ」
心なしか正樹がしゅんとしているように見える。
麻里は彼の珍しい表情に内心目を輝かせた。
(正樹さん、こんな顔もするんだ……! か、可愛いかも)
心の声を押し殺し、麻里は「でも今日のデート、すごく楽しいです」と笑みを浮かべた。
「私たち、家の中で一緒にご飯を食べたり、映画を見たりはしていましたけど……こうやって外でデートするのも良いですね。私一人では知ることのない世界を見せてもらってます」
「そうか。……それなら良いんだ」
正樹は気を取り直したようで、美味しそうにシャンパンを煽っていた。
麻里は気恥ずかしさに身を縮めながらおずおずと試着室から出た。
深みのある紺色が麻里の肌を鮮やかに際立たせてくれている。動くたびに室内の照明を浴びて、シルクの艶やかな生地がしっとりと上品な光沢を放っていた。
正樹はソファーから立ち上がり、無言で麻里に近づいてくる。
何も言わずにただじっと見つめられると、落ち着かない気分に拍車がかかる。
「正樹さん……? えーっと、やっぱり、私には似合いませんよね……」
「いや? 似合うよ」
正樹はそう言うと麻里の首に手を回した。首筋に彼の指が触れ、思わず目を閉じる。
彼のビターな香水の香りが鼻をくすぐった。
「あっ、これ……」
彼の手が離れると同時に目を開けると、麻里の首もとにはシンプルな一粒パールのネックレスが添えられていた。
「この方が良い。このまま家に連れて帰って、誰の目にも触れさせたくないくらい綺麗だ」
正樹はくすりと笑みを漏らすと、麻里の額にそっと唇を落とした。
「なっ……もう、正樹さん! コンシェルジュの方がいるのに……」
「誰もいない。俺が下がらせた」
「え? ……本当だ」
確かに辺りには誰もいない。
麻里はようやく肩の力を抜いて安堵のため息をついた。
すると正樹は「良い表情になった」とまた微笑んでいた。
「もっと見ていたいが、箍が外れそうだ。そろそろ行くとしよう」
麻里は再び正樹にエスコートされて、ブティックを後にした。
夕方に差し掛かる頃、二人が到着したのは高層ビルの最上階にある会員制ラウンジだった。
エントランスには看板すらなく、専用の暗証番号と生体認証を経て進むその空間は、全面が天井から床までの大きなガラス窓になっていた。
眼下には、遮るものが何一つない東京のパノラマが広がっている。ちょうど日が傾き始め、空色がオレンジ色に溶けていくところだった。
「すごい……! 綺麗ですね」
「喜んでもらえて良かった。ここなら麻里と静かに過ごせると思ったんだ」
半個室のようなソファー席に案内されると、すぐにシャンパンが二人のグラスに注がれる。
「乾杯」
「……か、乾杯」
二人でグラスを掲げ合い、グラスに口をつける。心地よい芳醇な香りと炭酸の刺激が心地よい。
「ふふっ……こうして二人で飲むのは久しぶりですね。山崎さん達とテレビ通話した時以来でしょうか」
麻里が懐かしむように微笑むと、正樹も目を細めて頷いた。
「そうだったな。……付き合ってすぐ俺の家に籠らせてしまったから、こうして外で飲むのは初めてか。窮屈な思いをさせてしまって申し訳なかった」
「謝らないでください! 正樹さんのお気遣いのおかげで安全に過ごせたんですから、感謝しかないです」
「だが、訴訟が終わった後もバタバタしてデートも出来なかった。反省しているんだ」
心なしか正樹がしゅんとしているように見える。
麻里は彼の珍しい表情に内心目を輝かせた。
(正樹さん、こんな顔もするんだ……! か、可愛いかも)
心の声を押し殺し、麻里は「でも今日のデート、すごく楽しいです」と笑みを浮かべた。
「私たち、家の中で一緒にご飯を食べたり、映画を見たりはしていましたけど……こうやって外でデートするのも良いですね。私一人では知ることのない世界を見せてもらってます」
「そうか。……それなら良いんだ」
正樹は気を取り直したようで、美味しそうにシャンパンを煽っていた。