【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
 その後、二人は軽い食事も注文し、酒と料理を楽しんだ。

「本当に最近平穏ですね。少し前の忙しさが嘘のよう。ふふふ、こうして正樹さんとお出掛けも楽しめて嬉しいです」

 麻里は久しぶりのアルコールでふわふわと心地よさを感じながら正樹に笑いかける。

「お仕事もすごく落ち着いているんです。山崎さんもお元気だし……。でも、どこかぽっかり穴が空いた気分で……。忙しかった反動で、時間があると落ち着かないのかも」
「気持ちは分かるが、あんな働き方をずっとしていたら身体が壊れてしまう」
「そうなんですけど……正樹さんが言っても説得力無いですよ。ずっと仕事ばっかりしてるじゃないですかー!」

 グラスを傾けながら、麻里は正樹の肩にそっと寄りかかる。
 アルコールのせいか、いつもより自制が効かない。

(私って、絡み酒だったんだ……)

 ぼんやりとそんな思いが頭をよぎるが、止められない。理性が頭の片隅に追いやられていた。
 ちらりと横目で正樹を見上げると、彼は驚きつつも麻里の頭をそっと撫でた。

「俺もしばらくは仕事をセーブするよ。学生時代からの目的も果たしたことだしな」
「本当ですか?」
「あぁ。だからこれからは、もっとたくさん出掛けよう。二人で」

 正樹が笑みを浮かべると、まるで映画のように様になっていた。
 いつも以上に彼が格好良く見える気がして、麻里の心臓が高鳴りだす。

「そろそろ行こうか。上に部屋を取ってある」

 正樹はグラスをテーブルに置くと、麻里の頬を指先でそっと撫でた。
 そのまま麻里の唇の輪郭をなぞるようにゆっくりと動く。触れられている部分が焼けるように熱い。

(部屋って……)

 ふわふわとしていた頭が急に冷静になる。
 慌てて正樹の腕を掴むと、彼はいたずらっぽく微笑む。その瞳は熱を帯びていた。

「あの!」
「ほら、行こう」

 結局、有無を言わさぬ正樹の完璧なエスコートで、高層階へと続く専用エレベーターへと歩みを進めたのだった。



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