君といた日々。
3
(海の中って、こうなっているんだ…)

海の中は、思ったより綺麗な景色が広がっていた。

こんなにも美しくて、キラキラしているとは思ってもいなかった。

この水の膜のおかげなのだろうか。

見るもの全てが陸と違うから、キョロキョロしてしまう。

図鑑で見たことのある魚。

わかめ。

珊瑚。

次第に僕の目は、この海の中と同じく、キラキラと輝いていった。

ふと、光が集まっている場所に目がいく。

「あ、あれ…」

「ん?どうしたの?」

「本で読んだことがある、あれが、人魚の国?」
僕が指差すと、フィオナは頷いた。

「そう!私の故郷!」

「そうなんだ。とても綺麗な場所だね。」

人魚の国。

かつて、人間の見える場所にあった人魚の国は、人間の国と対等な関係であった。

人間と人魚の間に、これからも助け合い、共に生きていく証として、友好条約が結ばれた。

だが、それを見た悪い海の神、「ナヴィア」は、それを許さず、最悪の災害をもたらした。

大きな大きな津波の影響により、海面が上昇し、人間の街が呑まれた。

当時、山へと逃げた人々が築いた街が、今の僕達が住んでいる街だ。

今では、人魚の国は見えないところにあり、

その存在は人間が確認できない程、

深い深い海の底にあると言われている。
と、本にはそう書かれている。

僕は人魚の国とは反対の方向を見た。

そこには、本で書かれている、かつての人間の国があった。

どれくらい高い津波が襲ったのかを、目の当たりにした。

「…」

「凄いよね。こっち。」

フィオナが僕の見ている方向を見て言った。

「本当に、あったんだね…」

「うん。そう。あったよ。」

どれだけ綺麗な景色にも、残酷な歴史はある。
それが、改めて分かった。

僕は、フィオナの手をぎゅっと握る。

フィオナもそれに答えるように、ぎゅっと握ってきた。
< 19 / 28 >

この作品をシェア

pagetop