君といた日々。
3
帰り道、街を歩いていると、花屋の前を通った。
花屋には、今の時期の花や、フラワーアレンジメントが置いてある。

「あ、母さん、ここでお花買ってくからここで待ってて?」

「は〜い!」

母さんがお花を買ってる間、僕はぼんやりと街の景色を見ることにした。

(今日は人が多いな〜…もう少しでお祭りだからかな?)

年に一度のお祭り。

今日は、お祭りで出す、屋台の人達の話し合いがあったらしい。

だから、こんなに人が多いのかもしれない。
人混みは少し苦手だ。

知らない人の声が重なるだけで、落ち着かなくなる。

早く、母さんが帰ってこないか。
そんな事を考えていたら、何処からか歌が聞こえてきた。

「〜♪」

「…歌?」
(歌は聞こえるけど、どこからなんだろ…)

「〜♪」

何処から聞こえているのか分からず、辺りをキョロキョロと見回す。

「綺麗…海から?」

まるで、「自分は、ここにいる」と言っているかのようだ。
呼ばれている気がする。
そう思い、一歩踏み出した。
その瞬間、自分の心臓が上に浮いた感覚がした。

「あ…っ、!」

(しまった…!!)

そう思ったときには遅かった。

ドボンっという音と共に、僕は海に落ちた。
どんどん自分の身体が海の底へと落ちていく。

「ん?シェイド?シェイド〜!!」

陸からは、お母さんの声が聞こえる。
返事をしたくてもできない。
そんな事をしたら、空気が抜けて死んでしまうからだ。

「ゴポポッ」

(どうしよ…っ、人魚の歌って…人間を殺して食べるために誘う歌でもあったよね…?でも、ここの人魚は良い人魚達ばかりだし…)

どんどん落ちていく。
自分が最後に吸った酸素も失いながら。

「ゴポッゴポポッ…!」

(誰か…)

「ゴポポ…」

(助けて…)

陸から、焦っている母さんの声が聞こえる。

(母さん、父さん、おばあちゃん…ごめん。)

もう駄目だと理解し、命の終わりを告げるかのように目を閉じた。

その時だった。

「大丈夫?!」

誰かの声が聞こえた。
海の底なのに、誰かの声が聞こえた。

「ゴポポッ」

(誰…?もう、意識が…)

僕の意識はそこで途切れた。

「っ!しっかり!」
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