聖女の力のない令嬢の織った布に、冷徹公爵は恋をした。
リディアは振り返った。
アルシェが立っていた。茶会の席の、少し離れた場所に座っていたはずだったが、いつの間にか立ち上がっていた。
その目はクローデットに向けられていた。琥珀色の目が、いつもより暗い色をしていた。
広間が静まり返った。
「公爵、閣下……!?」
クローデットの声から、余裕が消えていた。
「何か……」
「今の言葉をもう一度言ってみろ」
命令形だった。静かだが、底に何か冷たいものが流れていた。
「……あの、私はただ」
「力のない娘を社交の場に出すのは恥だと、そう言ったか」
クローデットは黙った。否定もできなかった。広間の全員が聞いていたのだから。
アルシェは一歩、クローデットの方へ歩いた。