聖女の力のない令嬢の織った布に、冷徹公爵は恋をした。



 それから結婚式は翌年の春だった。

 クレピャ聖国の慣わしでは、三大公爵家の婚儀は王宮の大聖堂で執り行われる。
 白い石造りの天井が高く、朝の光が色硝子を通して床に降り注ぐ、荘厳な場所だ。

 リディアは純白のドレスを纏い、父に手を引かれて長い廊下を歩いた。

 扉の向こうに、アルシェが待っている。

 それだけを考えていた。

 扉が開いた瞬間、参列者の視線が一斉にリディアに向いた。貴族たちの顔が並んでいた。エレナが最前列近くに座っていて、リディアを見てにこりと笑った。母マリエルは既に目が赤かった。

 だがリディアの目は、一番奥にいる人物に向かっていた。

 アルシェが、祭壇の前に立っていた。

 礼服は深い緑で、胸元にネティヤ家の紋章が光っていた。夜会の夜と同じ色だった。だが表情が違った。あの夜は広間の喧騒の中で壁際に立ち、どこか遠くを見ていた。今は、リディアだけを見ていた。

 まっすぐに。最初から変わらない、琥珀色の目で。


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