向日葵が向くのは、太陽じゃない。
第4章:傾く天秤
「俺じゃ、ダメかな」
街の喧騒の中、僕の言葉は日葵の耳元にしっかりと届いていた。
日葵は涙を浮かべた目のまま、ハッとしたように僕を見つめる。
その瞳は驚きに揺れていたけれど、決して拒絶の色はなかった。
それどころか、彼女の頬がじわじわと赤く染まっていく。
「想……、それって……」
「……あいつに泣かされるお前を、もう見てられない。俺なら、絶対にそんな思いさせない」
もう引き返さない。僕は日葵の手をぎゅっと握りしめた。
日葵の手は少し冷えていたけれど、僕の手のひらの熱を吸い取るように、弱々しく握り返してきた。
その日を境に、日葵の中で天秤は完全に傾き始めていた。
「想、今日、一緒に帰ろ?」
学校でも、日葵は隠そうともせず僕の元へやってくるようになった。
陽太からの着信があっても、日葵はそれを見つめたまま、静かに電源を切る。
あんなに陽太の顔色ばかり気にしていた日葵が、今は、僕だけを見て、僕のために笑っている。
「想といると、すごく安心する。……私、今まで自分の気持ちに嘘ついてたのかも」
放課後の夕暮れ、二人で歩く河川敷。
日葵がはにかむように僕を見上げてそう言った瞬間、胸がちぎれそうなほど愛おしさが込み上げた。
そっと指を絡ませる。
恋人繋ぎになった僕たちの手に、日葵はそっと自分の体を寄り添わせてきた。
もう、僕たちの関係は「ただの幼馴染」の境界線を完全に越えていた。
けれど、そんな僕たちの幸せな時間を引き裂くように、あいつが現れる。
「――おい。何してんだよ、お前ら」
河川敷の階段の上。
夕日を背に浴びながら、陽太が冷酷な、だけどどこか焦りを含んだ目で僕たちを見下ろしていた。
いつもなら他の女と夜遊びしているはずの時間なのに、なぜか日葵を探しにきたらしい。
「日葵、俺の電話シカトして、何こんな奴と手繋いでんの。……帰るぞ」
陽太が強引に階段を降りてきて、日葵のもう片方の腕を掴む。
いつものチャラついた態度は消え失せ、絶対に日葵を手放したくないという、男の執念と独占欲を剥き出しにしていた。
「離して、陽太……っ!」
「離すわけねぇだろ。お前は俺の彼女なんだよ!」
拒絶されて怒りに目を見開く陽太。
その瞬間、僕は日葵を自分の背中に引きずり込み、陽太の腕を力強く振り払った。
「触るな。日葵は嫌がってる」
僕と陽太の視線が、バチバチと火花を散らす。
一歩も引かない僕の態度に、陽太は初めて、僕を「ただの幼馴染」ではなく「一人の男(ライバル)」として 殺気立つような視線で睨みつけてきた。
街の喧騒の中、僕の言葉は日葵の耳元にしっかりと届いていた。
日葵は涙を浮かべた目のまま、ハッとしたように僕を見つめる。
その瞳は驚きに揺れていたけれど、決して拒絶の色はなかった。
それどころか、彼女の頬がじわじわと赤く染まっていく。
「想……、それって……」
「……あいつに泣かされるお前を、もう見てられない。俺なら、絶対にそんな思いさせない」
もう引き返さない。僕は日葵の手をぎゅっと握りしめた。
日葵の手は少し冷えていたけれど、僕の手のひらの熱を吸い取るように、弱々しく握り返してきた。
その日を境に、日葵の中で天秤は完全に傾き始めていた。
「想、今日、一緒に帰ろ?」
学校でも、日葵は隠そうともせず僕の元へやってくるようになった。
陽太からの着信があっても、日葵はそれを見つめたまま、静かに電源を切る。
あんなに陽太の顔色ばかり気にしていた日葵が、今は、僕だけを見て、僕のために笑っている。
「想といると、すごく安心する。……私、今まで自分の気持ちに嘘ついてたのかも」
放課後の夕暮れ、二人で歩く河川敷。
日葵がはにかむように僕を見上げてそう言った瞬間、胸がちぎれそうなほど愛おしさが込み上げた。
そっと指を絡ませる。
恋人繋ぎになった僕たちの手に、日葵はそっと自分の体を寄り添わせてきた。
もう、僕たちの関係は「ただの幼馴染」の境界線を完全に越えていた。
けれど、そんな僕たちの幸せな時間を引き裂くように、あいつが現れる。
「――おい。何してんだよ、お前ら」
河川敷の階段の上。
夕日を背に浴びながら、陽太が冷酷な、だけどどこか焦りを含んだ目で僕たちを見下ろしていた。
いつもなら他の女と夜遊びしているはずの時間なのに、なぜか日葵を探しにきたらしい。
「日葵、俺の電話シカトして、何こんな奴と手繋いでんの。……帰るぞ」
陽太が強引に階段を降りてきて、日葵のもう片方の腕を掴む。
いつものチャラついた態度は消え失せ、絶対に日葵を手放したくないという、男の執念と独占欲を剥き出しにしていた。
「離して、陽太……っ!」
「離すわけねぇだろ。お前は俺の彼女なんだよ!」
拒絶されて怒りに目を見開く陽太。
その瞬間、僕は日葵を自分の背中に引きずり込み、陽太の腕を力強く振り払った。
「触るな。日葵は嫌がってる」
僕と陽太の視線が、バチバチと火花を散らす。
一歩も引かない僕の態度に、陽太は初めて、僕を「ただの幼馴染」ではなく「一人の男(ライバル)」として 殺気立つような視線で睨みつけてきた。