眼鏡フェチがバレたら、税理士さんに甘く逃げ道を塞がれました
⑤
――翌月。
「お疲れ様です、森川さん」
「あっ、瀬戸さん。お疲れ様です」
コワーキングスペースに現れた瀬戸さんは、やはりいつものようにコンタクトだった。内心ほっとしたのに、心臓の鼓動が勝手に速くなる。
(おかしいな……今日は眼鏡じゃないのに)
いつものようにミーティングもできる個室ブースに入って四人掛けの席に向かい合って座る。彼は仕分け終えたレシートの封筒を返しながら、何気ない口調で言った。
「私はこれまで、森川さんの作品はすべて拝見してきました」
「え? ああ、そうですよね。いつも公開当日にメールで感想もくださって。ありがとうございます」
(……いきなりどうしたんだろう)
首をひねっていると、瀬戸さんはますます謎が深まるようなことを言う。
「先日お会いした時、気になることがありまして。改めてすべてを再チェックさせていただいたんです。そうしたら、登場人物のある共通点に気付いたんですよ」
彼は細かい字が印刷されたA4用紙を取り出し、テーブルに広げる。
「眼鏡率がやけに高いなと」
「へっ?」
「企画は、森川さんの持ち込みなんですよね?」
その紙には、私が脚本を担当した作品名と登場人物、そして眼鏡の有無が記載されていた。
「もちろん作品のジャンル上、登場人物が知的なキャラクターが多かった作品もありますが、それにしても、です。……これは私の憶測ですが、もしかして森川さん」
彼はにこりと笑みを浮かべた。
「眼鏡、お好きなんですか?」
(……まさか、前回会ってた時そういう目で見てた変態だと疑われてるんじゃ)
「ぐっ、ぐぐぐぐ偶然ですよ……!」
必死に否定しようとして声が裏返ってしまった私を見て、瀬戸さんは我慢できないというように口元に拳をやりながら小さく笑う。
「……わかりやすい人だ」
瀬戸さんが次に何を言い出すのかハラハラしながら身構えていると、彼はビジネスバッグの中から細長いケースを取り出す。そしてそのケースを開き――先日とは異なるネイビーのハーフリム眼鏡を装着した。
(こっちも信じられないくらい似合ってる……って見惚れてる場合じゃない)
「今日はコンタクトのはずじゃ?」
眼鏡越しの視線から目が離せないまま尋ねると、瀬戸さんは口元を緩めた。
「ああ、これはまだ度を入れていません。あなたの反応を確認するために持ってきました」
「ど、どういうことですか?」
瀬戸さんは向かいの席から立ち、個室ブースのロールスクリーンを引き下ろして外からの視界を遮る。ゆっくりこちらに近付いてくると、私が座る回転椅子を回して自分の方へ向けた。そして、ひじ掛けに手を置いてぐっと身を乗り出してくる。
(っ……)
鼻先が触れそうなほど近付いた距離に、速かった鼓動がますます早鐘を打つ。
「これまで、一度も不思議に思いませんでしたか? 私たちはこんなに頻繁に会わなくてもいいのでは、と」
(……。そ、そう言われてみれば……)
頭の中が常に脚本の構想でいっぱいで気にしていなかったけれど、私の仕事には仕入れや販売もないし、領収書が大量に増えたりしない。
「確かにいくら同じコワーキングスペースを使っているからって、他にもたくさんの方を担当されているのに、毎月私に時間を割いてくれるのは過剰サービス……かもしれないですね」
「ああ、このコワーキングスペースもあなたが通っていると知ってから会員になりました。会っていただくハードルを下げるために」
「ええっ!? なんでそんなこと……」
「本当にわかりませんか?」
一度意識してしまった男性の眼鏡姿が目の前にあるのに、落ち着いて考え事なんてできるわけがない。
「……あれほど物語の登場人物の気持ちを描けるのに、あなた自身に向けられる感情には疎いんですね」
瀬戸さんは回り込むように私の隣の席に腰かけ、手を取った。そして真剣な面持ちで口を開く。
「あなたに好意を持っているからです、森川しおりさん。私と、結婚を前提に交際してくれませんか?」
(けっこんをぜんていに、こうさい……)
聞こえてきた音声を漢字に変換していくと、3秒遅れで脳が内容を理解した。
「ええっ、結婚を前提に交際!?」
「そうです」
――今、思い出した。
毎月会うようになったのは、最初の確定申告を終えて少しした頃、「今日、あなたの作品を見ました」といきなり瀬戸さんから連絡が来たからだ。感想が書かれたメールの最後に、その提案があった。
(もしかして、あの頃から私のことを……? でも、どうして)
だってその感想は、なかなか手厳しい内容だったはずだ。実際、駆け出しだったあの頃の作品は、今の私が見ても直したいところはたくさんある。
私のフェチを把握したからか、瀬戸さんは見せつけるようにまた中指で眼鏡のブリッジに触れる。
「それにあなただって、眼鏡姿の私のことを悪くないと思っているでしょう?」
「うっ……」
人によっては嫌味にも聞こえそうな一言も、瀬戸さんなら冷静に分析した客観的事実として成立してしまう。
「それに私は、あなたが仕事で無茶をすることも、生活が乱れ切っていることも、勉強のための費用を割きすぎることも把握した上で、結婚を申し込んでいるんです。後からこじれる心配はありません」
「っ、それなら尚更おかしいですよ。金銭感覚がおかしい上に、生活も破綻しかけてる私がいいなんて……!」
自分で言っていて悲しくなってくるけれど、これは事実だ。でも彼は当然のように頷く。
「普通の人ならそうかもしれませんね。ですが私は、そんなあなたがいいんです」
瀬戸さんは私を真っ直ぐに見つめながら、優しく目を細める。まるで眩しいものを見るみたいに。
「……私には、あなたのように人生を捧げるほどのめり込めるものはありません。ですからあなたが寝食を忘れるほど仕事に没頭し、生活を後回しにしてしまうことは理解できない。でもその一方で……強く惹かれてしまうんです。そして、そんなあなたを支えたいと思うようになりました。仕事だけでなく、公私ともに」
彼は言ってくれた。
自分が持っていないきらきらしたものを、私の大量の領収書の中に見つけたのだと。
「あなたが安心して仕事に生きられるよう、サポートしたいんです。……森川さんは、私を仕事相手以上に見られませんか?」
彼のレンズ越しの瞳が、切なげに揺れている。
「……この気持ちは迷惑、ですか?」
「っ、そんなこと……」
(そんなことない。だけど……)
何も言えないまま荷物をまとめ、ブースを出ようとドアノブに手をかけると、回り込んできた瀬戸さんがドアを押さえつけた。
「待ってください。返事は今日でなくて構いません。一度、ちゃんと考えてみてください」
聞いたことのない必死な声につい、彼の方を振り向いてしまう。見上げた瀬戸さんの表情はとても不安げで、このまま気持ちを受け取りたくなる。だけど……
「……無理ですよ。だって、瀬戸さんは大事な人だから」
「え……?」
なかったことにして必死に誤魔化そうとしていた気持ちが、堰を切ったようにこぼれ出てくる。
「独立して以来ずっと支えてくれて、私を理解してくれて、話してると楽しくて。瀬戸さんは、仕事相手だけどそれだけじゃない。簡単に代わりになる人なんかいないんです」
それなのに彼は、私の全部を受け入れるなんて言う。だめでみっともないぐちゃぐちゃな部分を知って、それでも私を選んでくれる。
(大事な仕事相手を失ったら困るから、この感情から逃げてると思ってた。でも……それだけじゃなかったって、今気付いた)
こんな人を受け入れたら、きっと頼るのを超えて甘えすぎてしまう。彼がいなくちゃだめな自分になってしまう気がして怖かったんだ……。
(ずっとひとりで脚本を書いて、それだけで十分幸せだったのに)
彼は、買った物と時刻が記載された領収書という名の紙きれから、私の頑張りを読み取り、無理を叱ってくれる。
「そんな人を失ってしまうくらいなら、最初から手にしたくない……」
ドアノブを握っていた私の手に、瀬戸さんの手が重なる。
「……私も、似たようなことを考えていました」
(え……?)
「あなたと気まずくなって、契約を切られてしまうよりはと、面倒見のいい親切な税理士として接してきました。でも隠していても、あなたへの気持ちは止められなかった。気持ちを誤魔化して距離を置き続けても、結局あなたとの関係は今まで通りではいられなくなると気付いたんです。だって仕方がないでしょう」
瀬戸さんは、困ったような笑顔で言う。
「……会うたびに、あなたを好きになる」
その言葉に、ぐっと心を握られた気がした。
「『関係を壊したいんじゃない。この心に、嘘をつかない形に変えたいの』」
(……私が書いたドラマのセリフだ)
そうだ、辛辣なあの最初の感想メールで唯一褒めてもらえたところ。当時の彼の心に何を残せたのかはわからない。でもこの言葉が今、巡り巡って私の胸に届いた。
「ずっとこの仕事をしてきました。職業柄、嘘はつけないんです。数字にも自分にも」
仕事が彼をこうさせたのか、彼の性格がこの仕事を選んだのか、今の私に知るすべはない。瀬戸さんは「これは公平ではありませんね」と眼鏡を外し、私に向き直った。
「あなたが好きなんです。不完全で、放っておけなくて……でも、輝いているあなたが」
(っ……)
「急な話だとわかっています。さっきも言った通り、今すぐ答えがほしいわけではありません。ですが、軽い気持ちで言っているわけではないと伝えたかった」
彼の気持ちが、痛いほどに伝わってくる。……このドキドキを、眼鏡フェチを言い訳にしてはいけないと思った。こんな真摯な想いに向き合わないのはだめだ。
確かにきっかけは眼鏡だった。でもこの気持ちを認められたのは、彼が私をずっと見てくれていたから。だから、まっすぐに想いを返そう。
「瀬戸さん。私も、あなたが好きです」
「お疲れ様です、森川さん」
「あっ、瀬戸さん。お疲れ様です」
コワーキングスペースに現れた瀬戸さんは、やはりいつものようにコンタクトだった。内心ほっとしたのに、心臓の鼓動が勝手に速くなる。
(おかしいな……今日は眼鏡じゃないのに)
いつものようにミーティングもできる個室ブースに入って四人掛けの席に向かい合って座る。彼は仕分け終えたレシートの封筒を返しながら、何気ない口調で言った。
「私はこれまで、森川さんの作品はすべて拝見してきました」
「え? ああ、そうですよね。いつも公開当日にメールで感想もくださって。ありがとうございます」
(……いきなりどうしたんだろう)
首をひねっていると、瀬戸さんはますます謎が深まるようなことを言う。
「先日お会いした時、気になることがありまして。改めてすべてを再チェックさせていただいたんです。そうしたら、登場人物のある共通点に気付いたんですよ」
彼は細かい字が印刷されたA4用紙を取り出し、テーブルに広げる。
「眼鏡率がやけに高いなと」
「へっ?」
「企画は、森川さんの持ち込みなんですよね?」
その紙には、私が脚本を担当した作品名と登場人物、そして眼鏡の有無が記載されていた。
「もちろん作品のジャンル上、登場人物が知的なキャラクターが多かった作品もありますが、それにしても、です。……これは私の憶測ですが、もしかして森川さん」
彼はにこりと笑みを浮かべた。
「眼鏡、お好きなんですか?」
(……まさか、前回会ってた時そういう目で見てた変態だと疑われてるんじゃ)
「ぐっ、ぐぐぐぐ偶然ですよ……!」
必死に否定しようとして声が裏返ってしまった私を見て、瀬戸さんは我慢できないというように口元に拳をやりながら小さく笑う。
「……わかりやすい人だ」
瀬戸さんが次に何を言い出すのかハラハラしながら身構えていると、彼はビジネスバッグの中から細長いケースを取り出す。そしてそのケースを開き――先日とは異なるネイビーのハーフリム眼鏡を装着した。
(こっちも信じられないくらい似合ってる……って見惚れてる場合じゃない)
「今日はコンタクトのはずじゃ?」
眼鏡越しの視線から目が離せないまま尋ねると、瀬戸さんは口元を緩めた。
「ああ、これはまだ度を入れていません。あなたの反応を確認するために持ってきました」
「ど、どういうことですか?」
瀬戸さんは向かいの席から立ち、個室ブースのロールスクリーンを引き下ろして外からの視界を遮る。ゆっくりこちらに近付いてくると、私が座る回転椅子を回して自分の方へ向けた。そして、ひじ掛けに手を置いてぐっと身を乗り出してくる。
(っ……)
鼻先が触れそうなほど近付いた距離に、速かった鼓動がますます早鐘を打つ。
「これまで、一度も不思議に思いませんでしたか? 私たちはこんなに頻繁に会わなくてもいいのでは、と」
(……。そ、そう言われてみれば……)
頭の中が常に脚本の構想でいっぱいで気にしていなかったけれど、私の仕事には仕入れや販売もないし、領収書が大量に増えたりしない。
「確かにいくら同じコワーキングスペースを使っているからって、他にもたくさんの方を担当されているのに、毎月私に時間を割いてくれるのは過剰サービス……かもしれないですね」
「ああ、このコワーキングスペースもあなたが通っていると知ってから会員になりました。会っていただくハードルを下げるために」
「ええっ!? なんでそんなこと……」
「本当にわかりませんか?」
一度意識してしまった男性の眼鏡姿が目の前にあるのに、落ち着いて考え事なんてできるわけがない。
「……あれほど物語の登場人物の気持ちを描けるのに、あなた自身に向けられる感情には疎いんですね」
瀬戸さんは回り込むように私の隣の席に腰かけ、手を取った。そして真剣な面持ちで口を開く。
「あなたに好意を持っているからです、森川しおりさん。私と、結婚を前提に交際してくれませんか?」
(けっこんをぜんていに、こうさい……)
聞こえてきた音声を漢字に変換していくと、3秒遅れで脳が内容を理解した。
「ええっ、結婚を前提に交際!?」
「そうです」
――今、思い出した。
毎月会うようになったのは、最初の確定申告を終えて少しした頃、「今日、あなたの作品を見ました」といきなり瀬戸さんから連絡が来たからだ。感想が書かれたメールの最後に、その提案があった。
(もしかして、あの頃から私のことを……? でも、どうして)
だってその感想は、なかなか手厳しい内容だったはずだ。実際、駆け出しだったあの頃の作品は、今の私が見ても直したいところはたくさんある。
私のフェチを把握したからか、瀬戸さんは見せつけるようにまた中指で眼鏡のブリッジに触れる。
「それにあなただって、眼鏡姿の私のことを悪くないと思っているでしょう?」
「うっ……」
人によっては嫌味にも聞こえそうな一言も、瀬戸さんなら冷静に分析した客観的事実として成立してしまう。
「それに私は、あなたが仕事で無茶をすることも、生活が乱れ切っていることも、勉強のための費用を割きすぎることも把握した上で、結婚を申し込んでいるんです。後からこじれる心配はありません」
「っ、それなら尚更おかしいですよ。金銭感覚がおかしい上に、生活も破綻しかけてる私がいいなんて……!」
自分で言っていて悲しくなってくるけれど、これは事実だ。でも彼は当然のように頷く。
「普通の人ならそうかもしれませんね。ですが私は、そんなあなたがいいんです」
瀬戸さんは私を真っ直ぐに見つめながら、優しく目を細める。まるで眩しいものを見るみたいに。
「……私には、あなたのように人生を捧げるほどのめり込めるものはありません。ですからあなたが寝食を忘れるほど仕事に没頭し、生活を後回しにしてしまうことは理解できない。でもその一方で……強く惹かれてしまうんです。そして、そんなあなたを支えたいと思うようになりました。仕事だけでなく、公私ともに」
彼は言ってくれた。
自分が持っていないきらきらしたものを、私の大量の領収書の中に見つけたのだと。
「あなたが安心して仕事に生きられるよう、サポートしたいんです。……森川さんは、私を仕事相手以上に見られませんか?」
彼のレンズ越しの瞳が、切なげに揺れている。
「……この気持ちは迷惑、ですか?」
「っ、そんなこと……」
(そんなことない。だけど……)
何も言えないまま荷物をまとめ、ブースを出ようとドアノブに手をかけると、回り込んできた瀬戸さんがドアを押さえつけた。
「待ってください。返事は今日でなくて構いません。一度、ちゃんと考えてみてください」
聞いたことのない必死な声につい、彼の方を振り向いてしまう。見上げた瀬戸さんの表情はとても不安げで、このまま気持ちを受け取りたくなる。だけど……
「……無理ですよ。だって、瀬戸さんは大事な人だから」
「え……?」
なかったことにして必死に誤魔化そうとしていた気持ちが、堰を切ったようにこぼれ出てくる。
「独立して以来ずっと支えてくれて、私を理解してくれて、話してると楽しくて。瀬戸さんは、仕事相手だけどそれだけじゃない。簡単に代わりになる人なんかいないんです」
それなのに彼は、私の全部を受け入れるなんて言う。だめでみっともないぐちゃぐちゃな部分を知って、それでも私を選んでくれる。
(大事な仕事相手を失ったら困るから、この感情から逃げてると思ってた。でも……それだけじゃなかったって、今気付いた)
こんな人を受け入れたら、きっと頼るのを超えて甘えすぎてしまう。彼がいなくちゃだめな自分になってしまう気がして怖かったんだ……。
(ずっとひとりで脚本を書いて、それだけで十分幸せだったのに)
彼は、買った物と時刻が記載された領収書という名の紙きれから、私の頑張りを読み取り、無理を叱ってくれる。
「そんな人を失ってしまうくらいなら、最初から手にしたくない……」
ドアノブを握っていた私の手に、瀬戸さんの手が重なる。
「……私も、似たようなことを考えていました」
(え……?)
「あなたと気まずくなって、契約を切られてしまうよりはと、面倒見のいい親切な税理士として接してきました。でも隠していても、あなたへの気持ちは止められなかった。気持ちを誤魔化して距離を置き続けても、結局あなたとの関係は今まで通りではいられなくなると気付いたんです。だって仕方がないでしょう」
瀬戸さんは、困ったような笑顔で言う。
「……会うたびに、あなたを好きになる」
その言葉に、ぐっと心を握られた気がした。
「『関係を壊したいんじゃない。この心に、嘘をつかない形に変えたいの』」
(……私が書いたドラマのセリフだ)
そうだ、辛辣なあの最初の感想メールで唯一褒めてもらえたところ。当時の彼の心に何を残せたのかはわからない。でもこの言葉が今、巡り巡って私の胸に届いた。
「ずっとこの仕事をしてきました。職業柄、嘘はつけないんです。数字にも自分にも」
仕事が彼をこうさせたのか、彼の性格がこの仕事を選んだのか、今の私に知るすべはない。瀬戸さんは「これは公平ではありませんね」と眼鏡を外し、私に向き直った。
「あなたが好きなんです。不完全で、放っておけなくて……でも、輝いているあなたが」
(っ……)
「急な話だとわかっています。さっきも言った通り、今すぐ答えがほしいわけではありません。ですが、軽い気持ちで言っているわけではないと伝えたかった」
彼の気持ちが、痛いほどに伝わってくる。……このドキドキを、眼鏡フェチを言い訳にしてはいけないと思った。こんな真摯な想いに向き合わないのはだめだ。
確かにきっかけは眼鏡だった。でもこの気持ちを認められたのは、彼が私をずっと見てくれていたから。だから、まっすぐに想いを返そう。
「瀬戸さん。私も、あなたが好きです」