ライオンのサーカス
 



 王国のパトカーのサイレンが鳴り響いている中、カナトは、黙ったままモネのところにくると縛られていた手を解いた。

 モネは、生まれて初めてカナトにまともに右手で頬を張られた。

 パッチーンと大きな音がして、モネは倒れそうになった。
 見上げるといわゆるかんかん状態のカナト。


「こんのバカタレ!。港へは行くなって言った!。何度も言った!。こういう事になるから僕は言ったんだ!」


 シロウが手招きするので行くと、今度はパチンと左頬にシロウのビンタが綺麗に入れられた。

 
「自分がどういう事をしたか分かってる?」

 
 シロウがモネに聞いた。


「死ぬ事だってあり得たんだよ。心配で死ぬかと思った。いつも僕たちは言ってただろ、港町には近づくなって。」

「バカ大嫌い!。誘拐なんかされて酷い目にあって。僕は、僕はお前が死んだらどうしようと思って……」


 そこであのいつも強気で無敵の幼なじみのカナトがぽたぽたと涙をこぼしたので、モネは口をあんぐり開けて驚いた。

 
「カナト、泣いて」

「うっせ!。殺されてえか!。今度やったら僕がお前を絶対に殺してやるからな!」


 本末転倒な事を言いながらカナトは手のはらで乱暴に涙を擦った。

 サヤが遠慮がちにモネに言った。


「右頬、手のひらの跡ぴったりついてますことよ」

「サヤ!君でしょう。モネを港に誘ったの。」

「死にてえんだよな?サヤ。」

「私、今日はモネの家に居たい、と申してましたの」


 サヤは潤んだ目で滔々と嘘をついた。


「それなのにモネが、港に行きたい、港に行って海がどうしても見たいと言うので仕方なく……」

「モネ?」


 カナトが、これまで見たカナトの笑顔の中で一番怖い笑顔でニコッとモネを振り向いた。
 さっきの涙はもう乾いている。

 ゴチン!

 察してモネが逃げ出す前に、カナトはモネをげんこで思い切り打った。

「痛い」

「ビンタ1で済むわけねえんだよ。あと100発げんこ。100発ビンタで100発鞭でケツ叩き。使用人に泣くまでさせるからな!。」

「う、嘘だようサヤあ」

「私知りませんわ。」

「サヤが怪しい」

 
 シロウが苦い顔で済まし顔のサヤに言った。


「ああん?」


 般若の様な顔のカナトがそのままサヤを見た。
 シロウがサヤを睨んだ。


「でも悪いのはモネ。これ線引き。僕たち、悪いけどモネのフィアンセだから。サヤ、君の面倒までは見ないからね。」

「もし本当だったら、仲間になんか入れねえ。お姫様だかなんだか知らないけど、調子づくのもいい加減にしろよ。僕はモネのフィアンセで、悪いけど、あんたの事は王室に見てもらえよ。僕そんな余裕ねえから。あんたがどうなっても僕は知らないからな。」

 
 カナトがサヤにメンチを切ると、サヤはそれでもにこにこしながら、扇で口を隠して、


(わたくし)嘘なんてひとつだって言いませんことよ」


 といけしゃあしゃあと言った。









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