可愛い後輩の天使くんはあざと狼でした
「いやいやいや、好きって?誰が?誰を?」
思わず声が裏返る。
「え? あ……え?」
今度はあまつかくんが困惑したように瞬きをした。
そして、ゆっくりと息を吸い込んで—
「俺……新山胡桃さんのことが好きです」
心臓が跳ねた。
「え? いや、な、なんで……?」
「俺が新人のときのバレンタイン…覚えてますか?」
そう言われて、思い浮かべる。三年ぐらい前?
「…あー、いっぱいチョコもらってたよね?」
「俺、甘いもの苦手で食べすぎた上に、いちごミルクまでもらって、断れる雰囲気でもなくて」
「あー……あったね」
確か差し入れで飲み物をもらった時だ。てんしくんは、これすきだよね!と女性社員が渡していた。
「新山先輩だって甘いの得意じゃないのに、
ブラックコーヒーと交換してくれたじゃないですか」
「……あー、あれは気分でさ」
「だとしても、めっちゃ嬉しかったんです」
あまつかくんは、まっすぐこちらを見る。さっきまでの“可愛い後輩”の顔じゃない。
「それに……
新山先輩だけが、俺をちゃんと名前で呼んでくれる」
その声は低くて、静かで、でもどこか震えていた。