私の好きな、彼のにおい~雨に降られたら彼の秘密を知りました~
「まあ、自分でミスしといて、尻拭いを人に頼むのはダメだけどな」

自販機に寄りかかり、彼はカチッといい音を立てて缶コーヒーのプルタブを起こした。

「あと、『てへぺろ』はいまどき、ない」

浅倉くんが大きな手で覆うように眼鏡を上げ、得意げにレンズが光る。

「確かに」

くすくすと笑いが漏れ、あんなにささくれていた心は治っていた。

「愚痴くらいいつでも聞いてやるから、そうカッカすんな」

「うん、ありがとう」

慰めるように彼が軽く、私の肩をぽんぽんと叩く。
気づかれないようにこそっと、彼のにおいを胸いっぱいに吸い込んだ。

「じゃ、頑張れ」

ひらひらと手を振って去っていく彼を、笑顔で手を振りながら見送る。

「……ぷはーっ」

見えなくなったところで息の限界が来て、思いっきり吐き出していた。
浅倉くんのにおいを吐き出すのがもったいなくて、必死に浅い呼吸で凌ごうとしたが無理だった。

「あれ、なんのにおいなんだろうな……?」

あのにおいが私は大好きなのだが、いまだになんのにおいなのか突き止められていない。



休みの日、私は百貨店を巡回していた。
目的は――香水売り場だ。

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