私の好きな、彼のにおい~雨に降られたら彼の秘密を知りました~
「大きいな……」
借りたジャージは袖も裾も何度も折らないといけない。
こんなにも体格が違うのだと改めて驚いた。
「シャワー、あり……」
リビングのドアを開け、そこまで言って止まる。
浅倉くんは煙草を吸っていたが、その姿が――妙に艶っぽいのだ。
ネクタイを緩めボタンをひとつあけ、キッチン台に完全に力が抜けて寄りかかっている。
レンズの向こうで愁いを帯び、伏せられた目。
筋張った長い指は軽く曲げられ、人差し指と中指のあいだに煙草が挟まれている。
それが口もとに運ばれ、じりりと赤い範囲が広がったあと、一拍おいてふーっと長くけだるそうに煙が吐き出された。
……なんですか、あれは。
破壊力が抜群すぎて雄叫びを上げそうな口を押さえ、その場に崩れ落ちそうになっていた。
「ん、出たのか?」
私に気づき、彼が慌てて傍に置いてあった灰皿で煙草を消す。
「あー、うん」
どきどきとうるさい鼓動を無理やり押さえ込み、平静を装って彼の前に立った。
「わるい。
出てくるまでに吸い終わってるつもりだったんだが」
まるで失敗がバレた子供のように、彼がばつがわるそうに笑う。