こじらせ騎士と王子と灰色の魔導士~前世殺し合った勇者と魔王ですが、偽装恋人はじめました~
「は? 王子から求婚? お前に?」

 女だってバレたのか? という言葉を飲み込む。
 さすがにリュートが驚いたのを確認すると、アイネはほっとした様子で頷いた。

「第一王子のアレクス様だ。僕が男でも構わないと」
「いや構うよな、構えよ、大いに構うだろ本人はともかく周りは。王位継承候補第一位。男を王妃に頂くのはそりゃまずいだろ世継ぎとか」

 ……一応、状況に合わせて答えてはみたものの。

(実際は女なんだから、本人が明かすつもりがあれば一番大きな問題はクリアできるよな。とはいっても、身分や教養面で問題が山積みだ)

 たしかアイネは王都から離れた田舎の出身で、平民である。人間の世界ではこのような身分差がある場合、結婚は成立しないはずだ。
 救国の英雄たるルミナスのような武勲があれば、その限りではないだろうが……。
 珍しく頭を使う難問にぶちあたったリュートの前で、アイネは困り顔で続けた。

「アレクス様の真意はわからないけれど、王妃様が乗り気なんだ。以前から、気の所為ではなく僕のことすごく目をかけてくれていて……。『娘がいたらあなたに娶らせていた』なんてよく言ってきていたんだけどね。それが何日か前に藪から棒に言われたんだ。『そもそも性別なんて些末なことだと気付いた』って」

 言いにくそうに言われた瞬間、リュートの脳裏に閃くものがあった。
 この国の王妃は、かつて勇者ルミナスと恋仲であったという。その死により結婚の約束は絶たれ、その後に別の相手と結ばれて三人の王子を産んでいる。

(王妃……! アイネがルミナスの魂を持つことに勘づいた……? それでなんとしてでも手に入れたくなったと。気持ちはわかる……いや、わからねえな。息子の結婚相手は自分の結婚相手じゃないし、一応こいつは今は「男」ということになってるわけだし、王子の立場を考えたらそりゃ無理ってもんだろ)

 よほどアイネ本人にそう言いたかったが、思いとどまる。アイネには預かり知らぬ事情だらけなので、とても知らせることができない。

「どうするんだ」
「どうすればいいと思う?」
「断れよ。悩むところかよ。悩むってことは、まさかお前には受け入れ余地ありなのか?」
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