こじらせ騎士と王子と灰色の魔導士~前世殺し合った勇者と魔王ですが、偽装恋人はじめました~
聞かれたから答えたのに、水色の瞳に不満そうに見られた。なんなんだよ? とリュートが睨み返すと、アイネは「断れたら断りたいよ」とぼやく。
「でもね、ただ断っても、断り切れないんだよ。『世継ぎの王子の相手が男でもいい』って、王妃様が言っているんだよ? なぜかアレクス様も了承してしまっているし。それを騎士隊の何人かの前で言われて……。隊長がとっさに箝口令を敷いてくれたけど、噂になるのも時間の問題だ」
「職場で上司の前で言われたのか。そこは思いとどまってくれていたら良かったのに」
王宮内の人間関係、勢力図。リュートとして、興味なさすぎてさほど知らないが、アレクスは盆暗ではないと聞いている。凛々しい青年で、お飾りではなく実力もきちんと備わっている、らしい。
考えれば考えるほど、非の打ちどころのない相手と思わずにはいられない。
しかも。
アイネは、実際には女性なのだ。
「一応聞くけど、なんでアイネは駄目なんだ?」
(そもそも駄目なのか? 「どうすればいいと思う?」と俺に聞くってどういう意味だ。俺も、なんでさっき「断れよ」って言ったんだ。そんなの、アイネの気持ち次第じゃないか)
自問自答するリュートの横で、眼鏡を手の中で弄びながらアイネは呟いた。
「僕は現場の兵士でいたいんだ。王子に囲われる気はない。たいした家柄でもないし、恋愛も結婚も自由にしたい」
「そうだなぁ……。世継ぎの確保のために、速攻で側室作るのも目に見えているしな」
「いやそのへんがまた、そうじゃないんだ。王妃様は『そういうのは好きじゃないから許さない』って。世継ぎなんか他の王子のところに出来たらそっちで良いじゃないかと。なぜかアレクス様もそれに同意しておられる。自分の子にはこだわらないと」
「そこまで言われたら、もう逃げられないじゃないか」
思わずリュートが言うと、アイネは眼鏡を握りしめて、きっぱりと歯切れよく言った。
「い・や!」
あまりに勢いがあったせいか、枝の上でぐらりと体勢を崩す。とっさにリュートが手を伸ばし、アイネもまた避難場所はそこしかないとばかりに胸に飛び込んできた。
「っ。お前……。俺が魔導士じゃなかったら、落ちていたぞ。気を付けろよ」
咄嗟に浮遊術を使って、枝からの落下を防ぎつつ、腕の中のアイネに言うと、なぜか微笑まれた。
(俺、お前のこと一回殺してんだぞ)
よっぽど言いたくなる。なんだその安心しきった顔は、と。
リュートの気持ちなど知らぬアイネは、水色の瞳を細めてリュートの顔をのぞきこみ、朗らかな口調で言った。
「そこでね、リュートに頼みがあるんだ。リュート、前に魔法で女の人になれるって言ってたよね? できれば僕より小柄で並ぶとお似合い、みたいな感じでお願いしたいんだ。『婚約者がいます、裏切れません』と言えば諦めてくれるかもしれないし……。最悪王子の恋敵として、王宮を敵に回して命を狙われても、リュートなら男の姿に戻っちゃえば追手をまけるでしょ? 名案だと思わない?」
断らせる気などない、すっきりとした笑顔だった。
「でもね、ただ断っても、断り切れないんだよ。『世継ぎの王子の相手が男でもいい』って、王妃様が言っているんだよ? なぜかアレクス様も了承してしまっているし。それを騎士隊の何人かの前で言われて……。隊長がとっさに箝口令を敷いてくれたけど、噂になるのも時間の問題だ」
「職場で上司の前で言われたのか。そこは思いとどまってくれていたら良かったのに」
王宮内の人間関係、勢力図。リュートとして、興味なさすぎてさほど知らないが、アレクスは盆暗ではないと聞いている。凛々しい青年で、お飾りではなく実力もきちんと備わっている、らしい。
考えれば考えるほど、非の打ちどころのない相手と思わずにはいられない。
しかも。
アイネは、実際には女性なのだ。
「一応聞くけど、なんでアイネは駄目なんだ?」
(そもそも駄目なのか? 「どうすればいいと思う?」と俺に聞くってどういう意味だ。俺も、なんでさっき「断れよ」って言ったんだ。そんなの、アイネの気持ち次第じゃないか)
自問自答するリュートの横で、眼鏡を手の中で弄びながらアイネは呟いた。
「僕は現場の兵士でいたいんだ。王子に囲われる気はない。たいした家柄でもないし、恋愛も結婚も自由にしたい」
「そうだなぁ……。世継ぎの確保のために、速攻で側室作るのも目に見えているしな」
「いやそのへんがまた、そうじゃないんだ。王妃様は『そういうのは好きじゃないから許さない』って。世継ぎなんか他の王子のところに出来たらそっちで良いじゃないかと。なぜかアレクス様もそれに同意しておられる。自分の子にはこだわらないと」
「そこまで言われたら、もう逃げられないじゃないか」
思わずリュートが言うと、アイネは眼鏡を握りしめて、きっぱりと歯切れよく言った。
「い・や!」
あまりに勢いがあったせいか、枝の上でぐらりと体勢を崩す。とっさにリュートが手を伸ばし、アイネもまた避難場所はそこしかないとばかりに胸に飛び込んできた。
「っ。お前……。俺が魔導士じゃなかったら、落ちていたぞ。気を付けろよ」
咄嗟に浮遊術を使って、枝からの落下を防ぎつつ、腕の中のアイネに言うと、なぜか微笑まれた。
(俺、お前のこと一回殺してんだぞ)
よっぽど言いたくなる。なんだその安心しきった顔は、と。
リュートの気持ちなど知らぬアイネは、水色の瞳を細めてリュートの顔をのぞきこみ、朗らかな口調で言った。
「そこでね、リュートに頼みがあるんだ。リュート、前に魔法で女の人になれるって言ってたよね? できれば僕より小柄で並ぶとお似合い、みたいな感じでお願いしたいんだ。『婚約者がいます、裏切れません』と言えば諦めてくれるかもしれないし……。最悪王子の恋敵として、王宮を敵に回して命を狙われても、リュートなら男の姿に戻っちゃえば追手をまけるでしょ? 名案だと思わない?」
断らせる気などない、すっきりとした笑顔だった。