元カノの恋愛小説が映画になったので、忘れたはずの初恋が大ヒット上映中です
「じゃあ――」

そう言いかけた時、校長先生から呼ばれた。

「話してるところごめんね。藤森先生、先日のキャリア教育の神崎さんと知り合いだっけ?」

「え? あ……はい」

「あのさ、この間の講演、神崎さんにもう一度頼めないかな?」

「え……?」

「実は、この前の講演を統括指導主事が見に来ていてね。すごく良かったから、他校でもやってほしいらしいんだよ」

「はぁ……」

「でも、講演費は微々たるものしか出せないから申し訳ないんだけど、何とか藤森先生からお願いできないかなって……」

「私から……ですか?」

「昔からの知り合いってことだから……お願いできないかな?」

「いや――」

そう断ろうとした時、今度は副校長先生が割って入る。

「ちょうどよかった! 藤森先生、この間の講演費の書類に不備があってね。明日の午前までに印鑑をもらって市役所へ送らないといけないんだよ。夕方に事務所へ行く約束だったんだけど、急遽保護者との面談が入ってしまって……。ついでにお願いできない?」

「えぇ……あの……はい……」

断る方法が分からなかった。

副校長先生から書類を渡される。

校長先生と副校長先生から、それぞれ「よろしく」と念を押された。

ため息をつく。

「藤森先生、神崎さんとお知り合いだったんですね?」

遠山先生が驚いたように尋ねてくる。

「え? ……あぁ……うん」

つい視線を逸らしてしまった。

「だから映画の時、変な質問だったんですね」

遠山先生は屈託なく笑った。

「え? あぁ……そうだね」

「でも今日は、夕食はご一緒するの難しそうですね」

「あぁ、うん。ごめんね」

「また今度お願いしますね」

「うん。また今度」

遠山先生の好意は嬉しかった。

それなのに、素直に受け取れなくなっている自分がいた。
< 11 / 31 >

この作品をシェア

pagetop