元カノの恋愛小説が映画になったので、忘れたはずの初恋が大ヒット上映中です
しかし、佐藤さんは急に話題を変える。

「藤森さんは、小説読んだ?」

「え? ……いえ……」

「そっか。今度あげるよ。事務所に山ほどあるから」

佐藤さんが何をしたいのか掴めない。

多分、悪気はないのだと思う。

でも、何となく癪に障る。

「……ありがとうございます。でも、自分で買います」

「へぇ。律儀だね」

「……」

「……誠さんは、何しに来たんですか?」

理緒の声が明らかに怒っている。

「理緒の友達と仲良くなりたいじゃん」

「はいぃ?」

また、俺が聞いたことのない理緒の口調だった。

「藤森さんとの出会いも、まみちゃんみたいな出会いになるかもしれないじゃん」

佐藤さんは、理緒が怒り出すことなど気にもしていない様子だ。

「藤森先輩も未来も立派なお仕事をされているので、会社にスカウトはできませんよ」

「それでも、ご縁は繋いでおいて損はないからさ」

「……もう……」

理緒は呆れた様子で、俺も何と言うのが正解か分からず、黙るしかなかった。

それでも、佐藤さんだけは飄々としていた。

< 25 / 31 >

この作品をシェア

pagetop