腕まくりイケメンバーテンダーの秘密
「え……」

 思わぬ言葉に頭を巡らせる。

「高三の秋に大学祭へ訪れた時、汗だくの学ラン姿の俺に、冷えたペットボトルのお茶を渡してくれて」

 よく覚えていない。ただ、私も入ったばかりのサークルで、慣れない人間関係にポツンとしていた時期だ。

「ごめん。覚えてない……」
「それじゃあ、これからは覚えてください。俺の初恋の人だってことを」

「初……」

 言葉の意味を全身で受け取るのにあと数時間かかりそう。

「人生において大切な人って言うと、ちょっと大げさですか? 好きです。菜津さん」
「でも、えっと。そんなこと、急に言われても……」

 どう返していいのか分からず、言葉が出てこない。彼の手が私の手の上に重ねられる。

「まだ俺のこと疑ってます?」
「えっと……そんなことはない……けど……」

 まさか、あなたの腕に惹かれてますとも言えず、口ごもる。

「今夜は自宅まで送って行きますね。明日の夜、また会ってもらえますか?」

 私は黙って頷いた。
< 18 / 21 >

この作品をシェア

pagetop