腕まくりイケメンバーテンダーの秘密

5.心奪われて

 翌日は土曜日。約束していた場所は、私の勤務する会社からすぐ近くの、大きなオフィスビルの前だった。エントランス付近で待っていると、中から蒼宮君が現れる。髪型を綺麗にセットし、高級そうなスーツ姿に思わず目を奪われそうになる。

「一緒に来てください」

 彼は私をエレベーターホールへ案内する。週末の夜、ひと気はまるでない。エレベーターに乗り、最上階で降りた。
 社名プレートに『SOBI』とあり、何の会社なのか頭を巡らせているうちに彼がドアを開け、そのままがらんとした廊下を進んだ。

「あの、蒼宮君……私なんかが入っても?」
「大丈夫ですよ。こちらへどうぞ」

 エグゼクティブルームと書かれた部屋へ案内される。
 大きな窓と中央に応接セットが置かれ、片隅にはバーカウンターが設置されていた。

「すべてを伝えれば、安心してもらえますよね」

 蒼宮君は大きなデスクを背にして私の正面に立ち、両手で名刺を差し出す。

「これがもう一つの俺の正体です」

 受け取った名刺には、蒼美(そうび)酒造株式会社 専務取締役 蒼宮圭人と書かれている。

「蒼美酒造……」
「名前ぐらいは知ってますか?」
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