終着駅のワンナイトは終わらない〜策士なイメチェン元後輩(一見ワンコ)の執着に囚われました〜【一話から】

7. ときめきも仕事もままならない

「それで、すっかり絆されちゃったわけ?自分の男運の悪さを忘れた?付き合った男がことごとく手のひら返しできたことも?」
「あ、う……」
「ちょっといいなじゃないの。勢いに流されないの。雪那はすごくしっかりしてそうにみえて、押しに弱すぎる。釣った魚に餌はあげないタイプにばかり釣られてきた過去を忘れたの?」
「……返す言葉もございません」

 大学のサークルが同じで、会社の同期の萩原(はぎわら)亜澄(あすみ)が険しい顔で言う。はじめは同じ営業だったが、育休を経てバックオフィスの総務部にいる彼女は何かと雪那を気遣ってくれる仲だ。玲司のことを最初に相談した際に厳しく、やめとけ、と唯一言ったのも彼女だ。元の玲司を知ってるという時点で説得力がある。

「まさか、尾崎もクズとは思わなかったけど。ごめんね、私があの時に引き合わせちゃったからさ」

 大和との顛末にも大変に憤ってくれた。新卒三年目で配属された支社で直属の先輩とトラブルになり、支社だけではなく、社内全体でも枕営業などとあらぬ噂が流れたときに、大和を含めたサークルの同期を集めた食事会をしてくれたのが彼女だ。

「別に大和が腐っていったのはもっと後からだし、亜澄のせいじゃないわ」
「腐って……。でも、雪那が仕事仕事って放置しすぎたのも悪いのよ。結婚を意識し始める時期に、ホイホイ転勤までしてさ。仕事第一すぎるのよ。俺のこと好きなのかわからないって愚痴溢してたわ」

 初めて聞く事実に、雪那はびっくりした。遠距離恋愛になることも気にせず心置きなく送り出してくれたものとばかり思っていた。
 
「そっか。亜澄も、聞いてたなら言ってくれたら良かったのに」
「言ったら転勤断ってた?仕事辞めて結婚してた?」
「…………しない、かな」
「じゃあ無駄に悩ませなかった私に感謝してよ」
「その通りです……」

 確かにその当時に言われても、雪那はその時点で大和との別れを決めていただけかもしれない。そこまでの熱を彼に持ってはいなかった。
 雪那は多分、恋愛に夢中になれないタイプだ。たった一人その相手のために尽くすのが幸せとか結婚がどうしてもしたいとまでは正直感じない。
 亜澄には「独身貴族はお金も仕事も自由で羨ましい。私なんて家庭を回すだけで精一杯」と言われるけど。でも「子供がいる幸せ」をたんまりのろけてくる彼女の「子供」が、雪那には「仕事」なのだ。大切なそれを守るためにがむしゃらにやると、楽しくてずっと夢中になってきた。
 
 ――が、そんな大事にしてきた仕事は相変わらずにうまくいかない。反抗期のお子さん持ちの気持ちがとてもわかる。
 
 雪那は同じビル内の社員なら優先利用できるカフェの机にグテンと伸びて頬を乗せた。亜澄がツンツンと上から突いてくる。

「こーら。女性社員の憧れ、魔性のクールビューティーがこんなところで伸びないの」
「憧れなんかじゃないよ。お局……もうただのお局」

 口からはため息しか出ない。
 脳裏につい昨日のことが思い返された。
 
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