約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
 着いたのは雑誌でもたびたび紹介される有名ホテルの系列店で高級感に溢れていた。

 屋外にも駐車場はあるが、激しい雨に加えて雷まで鳴り響いていることもあり湊は地下駐車場へ車を停めた。

 三人はホテルへ入り、エレベーターで二階へ向かう。

 カフェやラウンジがいくつかあるものの悪天候で足止めされた客が大勢押し寄せており、どこも満席だった。

 それに加えて備え付けられたテレビでは、『これから夜にかけて更に天候が悪化する』というニュースが流れてきて、「どうしよう……」「帰れるかな……」と不安そうな声があちこちから聞こえてきた。

 それを耳にした湊は険しい表情になる。

「まずいな……さすがに今以上の悪天候で車を走らせるのは危険だ……」

 自分一人なら何とかなるかもしれないが、今は和葉と詩音も居ることを考えると二人を危険に晒すわけにはいかなかったのだ。

 その時、詩音が眠たそうに目を擦りながら訴える。

「ママ……しおん、つかれた……。おなかすいた……」

 昼食からかなり時間も経ち、遊び疲れたせいで機嫌も悪くなりつつある。

 近くに飲食店はあるものの、この雨の中を移動するわけにもいかず湊は少し考えた末に口を開いた。

「和葉、急で悪いが、今日はこのホテルに泊まろう」
「えっ!?」
「もちろん部屋は二部屋取る。宿泊費も俺が払うから」

 突然の提案に和葉は戸惑った。

「で、でも……着替えも何も持ってきてないし……」
「心配ない。このホテルにはショップも入っているから着替えも下着も全て揃えられる」
「そうなんだ……。それなら大丈夫かな。でも、宿泊費はうちの分はうちで払うよ」
「金のことは気にしなくていい。とにかく部屋を取ろう」
「あ、湊さん……」

 そう言うと湊は和葉返事を待たずフロントへ向かった。

 しかし、考えることは皆同じだった。

 悪天候の影響で宿泊を希望する客が一斉に押し寄せ、フロントには既に列ができている。

「部屋、残ってるといいけど……」

 湊の横で和葉が不安そうに呟く中、ようやく順番が回ってきた。

「シングル一部屋とツイン一部屋をお願いします」

 湊が希望を伝えるとフロント係は申し訳なさそうに頭を下げた。

「誠に申し訳ございません。本日は急な悪天候の影響でほぼ満室となっておりまして、現在ご案内できるのはスイートルームとファミリールームのみでございます」

 その言葉に和葉は思わず湊を見上げるも彼は迷うことなく、

「それならスイートルームでお願いします」

 と答えた。

「えっ!?」

 湊の言葉に驚く和葉へ向き直り静かに説明する。

「スイートならリビングと寝室が別れているから俺はリビングで寝れるだろ?」
「でも、スイートなんて高いし……それならファミリールームで十分だから」

 遠慮する和葉だったが湊は首を横に振った。

「いや、こういうことはきちんとしておきたい」

 湊にとって和葉は特別な存在だが、和葉の気持ちは違う。

 かつて恋人同士だったとはいえ、今の二人はあくまで知人という関係だ。

 だからこそ一線は守るべきだと考えた湊は部屋を分けられるスイートルームを選び、改めてフロントへ告げた。

「スイートルームでお願いします」と。
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