喪失騎士エルディーテの冥界追想録 〜 孤独な騎士の過去を辿る、運命を覆す相互救済ロマンス~
調理場には一人で行って、ハーブを漬け込んだ度数の高い薬用酒が戸棚にあったことを思い出して取り出す。使用人ら気つけに使うもので、共用のため調理場に保管されていたのだ。

――ディアンの話が本当なら、試練を受けるべきは自分だ。

そう考え、服に忍ばせる。

目の前でみすみす死なせてしまった罪は重い。

警護を外されていたから、などという言い訳ならいくらでも立つ。
実際に当日の警護任務から外されていたエルディーテは処罰を受けなかった。

しかし王女付きの騎士として、心を許していた存在として、ずっと後悔してやまない。

ディアンの聞いた噂が真実ならば、先に試練を受けるべきはエルディーテだ。
そう確信したのだ。

連れ帰れたらディアンに引き渡す。

きっと自分の手で助けたいと願っているだろうが、これはある意味で二人を幸福に出来るチャンスなのだ。

自分の幸せなどとっくに諦めていたエルディーテにとって、これ以上の贖罪はない。


――あの日、サフィアがエルディーテをこの国から連れ出すと言ったように、今度は自分がサフィアを冥界から連れ出そう。


しかし、眠る弟の荷を奪って辿り着いた先で待っていたのは難題だった。
ケルベロスは協力的な様子を窺わせるが時間に追われるような気分でエルディーテは邸を歩く。

静かな邸はまるでどこかの貴族の邸宅のようで、けれども不可解な場所に幾つもの扉がついていた。

そのうちの一つを開いてみると、中から何かが飛び出してくる。

「……なっ……」

あまりの勢いに眉を顰めると、飛び出したものを追うように宙へ視線を向ける。

それは鳥だった。
ハチドリのようだが全身が青い。

そしてその鳥はエルディーテを見つめながら非常に速い羽ばたきで宙に佇みながら喋った。

「――お前があたらしい挑戦者?」
< 14 / 34 >

この作品をシェア

pagetop