喪失騎士エルディーテの冥界追想録 〜 孤独な騎士の過去を辿る、運命を覆す相互救済ロマンス~
サフィア達の一歩後ろに控えるのは、帝国騎士団の団長が推薦した家格の高いボルダー家の令息である。
これは最初にエルディーテが王女付きの護衛騎士となった時からの慣例だ。

他国の人間が顔を出す公の場では、エルディーテはサフィアの身辺警護から外れなければならない。

国内での茶会やパーティーでは護衛を任されているが、他国の人間にはエルディーテを見せたくない、というのが陛下の意向だった。

今夜はシルフィードの王子が居るため、エルディーテは他の騎士らと同様の扱いとなり、例によって会場内を監視していた。

不満はない、といえば嘘になるが、リシア帝国に生まれた以上、いかなる時もサフィアに付き従いたいというのは過分な望みというものだ。

その点をエルディーテは弁えていた。
一線を越えなければ、騎士団に収まっていられるのだと理解することこそが生存戦略。

愛し愛される婚姻こそ幸せだと憧れていた少女はもういない。
令嬢としての人生を捨て騎士を選んだ以上、尊厳は守りながらも上手く立ち回っていかなければならないと常に頭に入れている。

だがリシアでの苦労ももうじき終わるだろう。
サフィアはエルディーテをシルフィードへ連れてゆくと言った。

弟には申し訳ないが、王女との絆は手放せない。
それほどにエルディーテはサフィアの人格に心酔している。

少し浮き立つ気持ちを沈めながら、広い会場に監視の目を光らせていた。

そんなエルディーテの視界の端に、ちらちらと熱い視線が混じる。
令嬢達のものだった。

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