死者を救う試練で、初恋の騎士は眠れぬ番犬になっていた ~エルディーテの冥界追想録~
「はぁ……今日もなんて麗しいの。月の騎士様……私も侍らせてみたいわ」

「あなた観劇に影響され過ぎよ。でも凛としてらっしゃるのに、少し影のある感じが素敵よね……」

「背だって他の殿方と殆ど変わらないのよ。額に傷があるなんて気付かない程に美しいわ……あの方が男性ならよかったのに」

「実は私、月のお方の瞳と同じ色でハンカチに刺繍しましたのよ。出来上がったらお渡ししたいわ」

今やエルディーテは、数多の令嬢に恋文を渡される男装の麗人――月の騎士とまで噂されるほどになっている。

さすがに今夜のパーティーで彼女らが直接エルディーテの目の前にやってくることはなかったが、少し離れた場所で扇を立て好き放題会話していた。

隠しているつもりだろうが、残念ながら丸聞こえだった。いや、もしかすると敢えて聞かせているのかもしれない。

実際、反応を窺うような視線が時折りエルディーテの肌を舐めていた。

「あら、もう先を越されていてよ」
「どういう意味かしら」

「フランツ侯爵家のティアローゼ様よ。月の騎士様の前で手袋を落としたらしいわ」

つい最近の出来事だ。
気付けば無意識に眉間に皺が深まっていた。

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